おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

聖地・張切り Show View 宴7

咲き方ですが。花びら(外花被および内花被)の開き方で区分があります。

菖蒲を細かく見るようになるまで、個人的な菖蒲の花びらの印象は、ダックスフントの耳のように垂れたものでした。たらーんとして、風が吹くとひらひら花びらが波打つ感じですね。

この咲き方を「垂れ咲き」と呼びます。

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「業平」垂れ咲きの六英花 紫紅色で外側が縮緬(ちりめん)状

「業平」花被が六枚の六英花ですが、もちろん、三英にも垂れ咲きする品種はたくさんあります。

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「鶴の毛衣」垂れ咲きの三英花 純白

菖蒲の写真を撮っていて思ったのは、花と同じ高さの目線か、若干高いくらいで撮る場合は「垂れ咲き」の方が映えるような気がします。

「垂れ咲き」に対して、ほぼ横か斜め下くらいに花びらが開くのは「平咲き」。

横から撮ると微妙な模様を楽しめないので、上から眺めるような目線からの方が映えます。

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「加茂千歳」平咲き六英 

ちなみに、上の「加茂千歳」花びら周辺の紫が「覆輪」かと思っていたら、「覆輪」はもっと境界線が明確なものを指すようで、こういうのは「ぼかし」というのだそうです。グラデーションがきいた色の変化といったところでしょうか。

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「葵の上」平咲き三英 紅紫の脈入り 糸覆輪

珍しい咲き方としては、「玉咲き」「爪咲き」というのがあります。

つぼみが若干開いた形を保ったまま開花が完了します。玉のようにふくれた状態が「玉咲き」、少し割れてまさに爪を立てたようになっているのが文字通り「爪咲き」です。

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「白竜の爪」

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黒竜の爪」白色の「白竜の爪」に対し、こちらは藤紫色

これらの咲き方の品種は「鷹」とか「竜」とかが名前の一部に爪に特徴のある生き物があるものが多いようです。

これ以外に「受け咲き」という花びらが上を向いた形で咲く品種や、平咲きと垂れ咲きの中間みたいなものもあります。

この項では長々と花の特徴を示す用語をお伝えしてきました。実際に菖蒲を見る際に、花びらの数や、模様など、思い出していただければ幸いです。

長々とお付き合いいただきありがとうございます。

聖地・張切り Show View 宴6

花色の風合いの違いについて、あと少しお付き合いください。

花びらの縁の部分に、地の色と異なる色の縁取りの入ったように見えるのを「覆輪(ふくりん)といいます。

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アメリカ育成品種 「ステップルド・リップルズ」六英・覆輪

また、覆輪の中でも幅が細く、糸のように周辺を覆っている覆輪は、覆輪の中でも区別して「糸覆輪」と呼んでいます。

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京舞」の糸覆輪 花びら先端の白い縁取りです

この項の3で花びら(外花被・内花被等)の数による分類(三英・六英・八重・多弁)

について説明、その後、花の色合いや模様について今回まで述べてきました。

次回は、咲き方での区別をお話しし、花菖蒲を区別する用語の締めくくりにしたいと思います。

 

聖地・張切り Show View 宴5

前回、着物のような風合い、という表現をしましたが、菖蒲の花被の模様、というか「表情」といった方が適切だと思いますが、和服の生地を思わせるものがあります。

花被を布地と考えて、さっと別の色を刷毛やスプレーでつけたような表情を「絞り」と呼んでいます。「砂子」が点描の表現なのに比べ、細かな線がいくつも入る感じでしょうか。

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鳳凰冠」三英 垂れ咲き 白地に紅紫の絞り 糸覆輪(次回説明します)

もっとはっきりした線、例えば淡い色の地に濃い色の線が入ったものを「脈入り」と呼びます。

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「加茂万里」脈があまりはっきり撮れていませんね・・

逆に、濃い色の地に白い筋が入ったものは、そのものズバリで「白すじ」と呼ばれます。

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   「初紅」じゃないかと思うのですが、花が垂れていなくて違うかも

本日も写真ばかりで場所をとって、あまり説明が進みませんでしたm(__)m

この続きはまた次回に

聖地・張切り Show View 宴4

次に花の色や微妙な模様の区分けです
内外ともに花被がほぼ単一色の花は「単色」、外花被と内花被が異なった色で構成されている花を「二色花」と呼んでいます。ここの区別はわかりやすいですね。

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単色(濃い紅紫) 三英 垂れ咲き 品種名「寛政」

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二色花  外側(外花被)と内側(内花被)はっきり色が異なります

花びらをよく見ると、色の付き方も、点描のような色付けだったり、刷毛でさっと塗ったような風合いのもの、かすりの着物のような風合いのものなどがあります。

まずは、点描のような「砂子」

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砂子の紅紫色の花びらの品種名「京舞

粒のような紅紫色の点が点在、密集した部分は濃く、疎になった部分は地の白色に近い色合いで濃淡がみられる感じです。

花色風合いのバリエーション、次回以降に続きます。

聖地・張切り Show View 宴3

今回は花菖蒲をより深く鑑賞するために、違いを区別する見分け方を紹介したいと思います。三英とか平咲き、脈入りなどの専門用語が出てきて、???とならないよう、写真を交えて解説できればと思います。あんまり細かすぎても分かりづらいので、あくまでざっとしたものとしてご覧下さい。
花被の数
花びらと考えるとわかりやすいですが、厳密には異なります

菖蒲の花は大きく外側に開いた花弁(外花被)が目立ちますが、それと別に、鉾などと呼ばれる内花被(内側の小さな弁)があることがわかります。

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外に開いたのが外花被 内で立ったように見えるのが内花被です

通常、外花被も内花被も3枚ずつなのですが、野生の菖蒲をはじめとして、江戸古花は外花被部分が大きく、内花被が小さいため、花びらが3枚のように見えます。花菖蒲ではこの花びらのように見える部分を「英」というため、上の写真の花は「三英」の菖蒲ということになります。

品種改良する中で、外花被と同じくらいの大きさに内花被が発達するものが生まれてきます。そうなると、花びらが6枚あるように見えるので「六英」の菖蒲です。

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六英の品種 滋賀の浦浪

ちなみに菖翁の最高傑作「宇宙」は前回ご紹介した写真を見ると「六英」に近いようですが、図鑑では「多弁」となっています。内花被だけでなく、おしべなども弁化して、花びらが9枚程度までなり、重なって咲くものを「多弁」というそうです。当時はおそらく常識でははかり知れない花の形だったのかも。

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再び「宇宙」

本日はもっとも区別のつけやすい「英数」(理系教科みたいですが)についてお話ししました。次回は花びらの模様などについて説明しましょう。

 

聖地・張切り Show View 宴2

 

200の品種のうち、ほぼ半分が菖翁花の系統を受け継ぐ、江戸系、とくに江戸古花といわれる系統が占めるのに加え、同じ色や見栄えの花が隣り合わないように配置されるという、まさにショーガーデンの要素がふんだんに取り入れられています。

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乱数でどこに何を植えるか管理されているとか

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菖蒲田圃は全部で十四 そのうちの一番

菖蒲の花は品種によって花弁の数(三英・六英)や単色や筋・脈の入ったものが異なっていて、こうして並べられると個性が際立った状態で比較しながら鑑賞できます。

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十番 「火の国」とはいかにも肥後系というネーミング

そして、巡り合えました。「宇宙」

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菖翁の最高傑作「宇宙」おおぞら・うちゅうとも

 「遂に奇品出るにいたれり」と「花菖培養録」で絶賛した品種です。

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ふりがなは「うちゅう」とありますが、「おおぞら」の方が相応しいような

堀切菖蒲園は、荒川のすぐ東側にあるのですが、荒川の土手に堀切水辺公園があり、そこでも小規模ながら菖蒲が楽しめます。

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堀切菖蒲園から5分弱歩くと土手に

もちろん、数や品種では全く敵わないのですが、河川敷で対岸まで見えるので、こんな写真も撮れるのです。

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菖蒲の間に建つスカイツリー

また、遠近感を利用してこんな写真も

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菖蒲、スカイツリーとの勝負に勝つ

次回から、菖蒲の花の模様などについて触れていきたいと思います。

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花菖蒲についていかにもな話を述べてきたわけですが、本日、堀切菖蒲園を見てきて反省しました。

私、菖蒲の奥深さを全く分かっていませんでしたm(__)m

というくらい堀切菖蒲園のすごさを実感したわけです。

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堀切菖蒲園入口「江戸名所のひとつ」の言葉に自負が感じられます

「菖翁」、松平定朝が元麻布で勝負の品種改良をするのと並行して、庶民の間にも品種改良の動きがありました。元々湿地帯であったこの地域に、小高伊左衛門という人物が堀切村に初めて花菖蒲園「小高園」を開園したのが、堀切菖蒲園の元祖といえます。

花農家であった伊左衛門は、特に花菖蒲の栽培に心を尽くしていました。ある時、本所の旗本、万年録三郎から花菖蒲の分与を受けましたが、その中に菖翁作の花菖蒲を譲り受けていも含まれていました。

それらを元に堀切の地は、既存種の育成と新たな品種創生発展の地となります。花菖蒲のショールーム、いやショーガーデンの役割を果たしたわけです。

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堀切菖蒲園の案内看板 江戸時代にすでに堀切が菖蒲のメッカとして挙げられています

 大高園以外にも堀切には数々の花菖蒲園が誕生しましたが、昭和に入ると、都市化や水質の悪化、さらに食糧確保のための水田化などで一度は断絶。戦後、堀切園だけ「堀切菖蒲園」として営業を再開していました。その後、東京都が買収して公園として公開し、1975年に葛飾区に移管されて、現在に至っています。

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入口近くの灯篭から

現在200種6,000株を園内で公開しています。6,000株という数字は他の菖蒲園と比べても、決して多い数字ではないのですが、200種と実際の見せ方が、国内最古の観光菖蒲園の名前に恥じない奥の深いものでした。

次回に続きます。