おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

えんま異なもの味なもの3

この世(此岸)とあの世(彼岸)の境目に流れるのが三途川。人が死ぬと、この川を渡るわけですが、奪衣婆と懸衣翁は、三途の川の手前で死者を待ち、死者の衣服をはぎ取ります。人が死んだ後に最初に出会うあの世の官吏(役人?)がこの二人です。

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奪衣婆(だつえば)

奪衣婆が亡者からはぎ取った衣服は、懸衣翁が川の畔に立つ衣領樹という大樹(柳の木といわれています)に懸けられますが、生きている時に亡者が行った業が、衣服に染み付き、重ければ重いほど衣服を懸けた衣領樹の枝がしなります。そのしなり具合で死後に地獄・極楽行きの処遇が決められるのだとか。

罪深さが衣服に顕れる、というところは、仏教の因果応報の思想が現われている感じがしますね。

その後、次代が進むと、衣服を着ていない亡者はこの二人によって身の皮を剥がれる(!)とか、三途の川の渡し賃の六文を持たない者から衣服をはぎ取る、というように設定が変化していきました。更には奪衣婆は閻魔大王の妻である、との説まであらわれるようになります。

そして奪衣婆の存在が大きくなる一方で、次第に懸衣翁の影は薄くなったようですが、これが像例の少ない理由ではないかと思われます。

文殊院にはこの閻魔堂とお寺の開創の元となった延命地蔵のほか、足腰の守り神と知られる子の権現や、板橋宿の遊女の墓などの文化財を観ることができます。

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文殊院墓地内の遊女の墓

ちなみに上の写真、大きな墓石は宿場「大成川楼」家族の墓で、新しい碑の左側の小さなものが遊女の墓です。墓には複数の遊女の名前・戒名・出身地・命日などが刻まれています。楼主が抱えの遊女の墓を同じ敷地内に建て、墓に遊女の記録を刻むケースは希少だとのことです。

文殊院の紹介は以上ですが、次回からは他の閻魔さまなどをご紹介していきます。