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昨年の3月、「桜、咲くに見惚れる」の中で、ソメイヨシノ(染井吉野)の育成者は、江戸時代の園芸家(植木屋)、「樹仙」の名で呼ばれた伊藤政武であるという説をご紹介しました。その説が正しければ、育成されたのは18世紀前半から中頃ということになります。今から約280年以上も前のことで、残念ながら育成当時の原木は残っていません。
現在、日本でソメイヨシノの古木で最古級といわれる桜樹があります。
弘前公園:植樹年は明治十五年(1882)
福島開成山公園:同明治十一年(1878)
記録上それ以上に古いのが明治八年(1875)に植えられたといわれる、小石川植物園のソメイヨシノです。残念ながら、この樹がそうだ、と特定されていません(植物園公式)が、これではないかと推定されているのが、正門先のソテツの先にある一本。
ソメイヨシノが多く植えられるようになったのは、他の桜の種類より樹が成長するスピードが速いことにあります。樹齢が30年~40年までに大きく成長し、それ以降は成長曲線は鈍化するようです。その平均寿命は60年とも70年とも言われていますが、この桜はその倍以上の樹齢ということになりますね。
青年期の枝は伸びるのが速いため、つぼみの間隔は5~10CM離れています。中年~老年になるにしたがって枝の伸び幅が小さくなるため、つぼみの間隔が狭まっていくそうです。中年期で3~5CM、老年期で1CM位だとか。つまり、「花がかたまって咲く桜は樹齢が高い」ということが言えそうです。
また、樹齢が高くなるほど、花が咲く時期が若干早くなる傾向があるのだとか。というのも、成長期は花を咲かせるより、枝や葉など樹を大きくすることに栄養(エネルギー)が費やされるのに対し、成長が鈍化した樹はその分栄養を花に回す、という仕組みなのだそうです。そういえば、五十年弱前の桜は入学式の時期に満開でしたが、今は春休みの途中に満開を迎え、入学式では散りかかっているような気がします。
温暖化だけではなく、桜自身の老齢化がそこに影響しているのかも知れませんね。
桜(ソメイヨシノ)の話、続きます。