おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

花の命は身近くて2

ソメイヨシノが他の品種より寿命が短い理由としては、害虫や病気にかかりやすいこと、また幹や枝の表面に傷がつくと腐朽しやすい性質があるためです。できた傷を放っておくと腐朽が樹全体に広がって枯死してしまうことになります。

小石川植物園の古木も、別の角度から見ると太く枝分かれした幹を途中から切断した跡が見られます。

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別角度から見ると、一方の幹を切断した跡が・・

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざがあります。梅は勢いよく伸びる徒長枝(とちょうし)を切らないと花や実のつきが悪くなるのに対し、桜は枝や幹を切ると切断面から腐朽してしまい、悪い影響を与えてしまうことから生まれたことわざだと思われます。

しかし、ソメイヨシノの延命のために、老齢化(腐朽の始まったものを含む)した枝などを切断し、新梢(しんしょう)の発育を促すことで若返り延命をを図ることが行われるようになってきました。(切断面には腐朽菌の侵入を防ぐための薬剤を塗布します)ソメイヨシノアンチエイジング、といったところでしょうか。

上野公園の桜は昭和二十三年(1948)に植えられた、といいますから、樹齢は七十年を越えます。保護のために相当なメンテナンスが必要なのではないかと思われます。

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染井霊園のソメイヨシノ 花の間隔が狭く、相当の樹齢かと推測

さて、ソメイヨシノの特長に、群生しやすい、ということがあります。そのため多くの桜の花が楽しめるソメイヨシノの群生地が、おのずとお花見の名所となっていきます。

何故群生しやすいのでしょう。ソメイヨシノは接木で増やすことから、すべて同じ遺伝子を持つ(クローン)種です。そのため、桜樹密度(という言葉はありませんが)が高くとも、互いに枝を伸ばしながら成長していきます。別の樹から延びる枝同士でも、双方から伸びた枝は自分自身であると認識し合って、お互いの樹の範囲に枝を伸ばし合う現象が発生します。結局枝が重なり合ってしまい、双方の樹にとって日照不足となり成長を阻害してしまいます。桜の樹にもソーシャル・ディスタンスが必要だということでしょうか。

次回は、もう一本、首都圏最古級と思われるソメイヨシノをご紹介します。