おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

Smoking on the water3

手刻みによる製法は、刻み専門の熟練職人が頑張っても一日で一貫目(3.75KG、普通の職人だとその7割くらい)の葉を刻むのがやっとでした。これでは増えていくたばこの需要に追いつきませんので、生産効率を高めていく必要が出てきました。

まず、19世紀初頭に四国の池田地方で、「かんな刻み機」が開発されたと言われます。

寛政12(1800)年ごろ開発されたと伝わる「かんな刻み機」

木材で組まれた箱(上の写真で四つの穴の開いた部分)にブロック状に固めた葉たばこを詰め、それを最上部のかんなで削る仕組みになっています。器械の下部に踏木(ふみき)と呼ばれる棒が設けられ、これを踏むとたばこのブロックを上に送り出されて、たばこを素早く刻むことができる仕組みです。

これにより、一日三〜五貫目(約11kg〜19kg)のたばこを刻むことができたといいますから、生産効率は大きくアップしました。ただ、この器械で刻むためには、先に書いたようにたばこを材木のようにブロック状にするため、たばこの葉の束に油を塗って固めていました。そのため、塗られた油がたばこの風味を損ねてしまう、という欠点がありました。そういう意味で高級品の製造には向かず、廉価なたばこの製造に使われたようです。

文化年間(1804-18)に開発され、嘉永年間(1848-54)ごろから普及していったといわれるのが、「ぜんまい刻み機」です。

ぜんまい刻み機

上の写真の「Do not touch」の親指の先あたりに、すりこ木のような棒が横に設けられています。これを「撞木(しゅもく)」と呼びます。(お寺の鐘をつく木も同じく「撞木」で、おそらくそこから来た呼び名かと思われます)「撞木」を上下させると、器械の中に仕込まれたたばこ包丁の葉が上下します。分銅の重さを利用して歯車を動かし、包丁の上下の動きに合わせてたばこの葉を送り出すしくみになっています。

この方式は、たばこを固める必要がないことから、「ぜんまい刻み機」のような風味を損ねる心配がありません、そのため上物と呼ばれる高級品製造に使用されました。ただ、効率としては一日で一貫目、ということで、普通の職人が熟練の量に達する効率アップにとどまっています。

たばこの話、続きます。