おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

眠れる種子

大賀ハスは、遺跡に眠っていたハスの種を見つけ出し、大賀博士が種を育成、言い換えれば眠りから覚まして育てたケースですが、永い眠りから偶然覚めて花開くケースもありました。埼玉県行田市の「行田ハス」がこれにあたります。

行田市にある「古代蓮の里」

元々このあたりの土地はたくさんの水生植物が茂る湿地帯で、そこにはハスも花を咲かせていました。このハスは現在のハスに比べ花弁の数が少ない一方、大輪の花を咲かせる特徴があり、調査により古代種に属する蓮であることが判明しました。昭和三十五年(1960)には市の天然記念物にも指定されましたが、残念なことに化学肥料や農薬の普及に伴い急速に減少し、枯死・全滅してしまいます。

昭和四十六年(1971)、この地域に新しい焼却場施設を建設するための造成工事が始まります。焼却灰の処理場として隣接地を掘り下げる工事を行ったところ、掘った場所に水が溜まり、池が出来ました。この掘削により、地中深くに眠っていたハスの種が永い眠りから覚めたのでした。

昭和四十八年(1973)、5月15日 焼却場職員が水面に浮く丸い葉に気付きます。6月に 調査を行ったところ、古代蓮ではないかと推測されました。周囲が期待する中、葉の数は増え続け、ついに7月13日ピンクの花を咲かせました。6日後の19日には52を数える花が観測されました。

開花した花の形態的な特徴から、古代蓮と確認されました。地中深く眠っていた多くの蓮の実が出土し、自然に発芽して一斉に開花したするという事は極めて珍しいことといわれています。日本アイソトープ協会の調査の結果、およそ1400年前のものという結果でした。

行田市 古代蓮の里

その古代蓮の自生する付近を整備、平成七年(1995)に公園を開園し、平成十三年(2001)古代蓮会館がオープンして現在に至っています。

次回はこの「古代蓮会館」とそこからの景色などを紹介します。