彼岸花の別名として最もよく知られているのは「曼珠沙華」(まんじゅしゃげ・まんじゅしゃか)でしょう。私の年代だと、山口百恵さんのヒット曲としても知られます。
「法華経」の中に
為諸菩薩説大乗経 名無量義 教菩薩法 仏所護念
仏説此経已 結跏趺坐 入於無量義処三昧 身心不動
是時天雨曼陀羅華 摩訶曼陀羅華 曼殊沙華 摩訶曼殊沙華 而散仏上 及諸大衆
という一節があるのですが、意訳すると、
「(お釈迦さまが)多くの菩薩のために、大乗経に書かれた『無量義』『教菩薩法』『仏所護念』と名付けられた経典を説かれた。仏がこの経典の説法の時、結跏趺坐(座禅の時の坐る姿勢)され、心身とも不動であった。この時仏と菩薩たちの上に、天より『曼陀羅華』『摩訶曼陀羅華』『曼殊沙華』『摩訶曼殊沙華』の華が降ってきた。」
ここに出てくる「摩訶」は「大きな」という意味なので、「曼陀羅華(まんだらげ)」と「曼殊沙華」+それぞれの大きいもの、ということです。
いずれも伝説上の天界に咲く花で、「曼陀羅華」は美妙な花色の薫り高い花で、見る人に喜びを与え、「曼殊沙華」は柔らかな花びらの純白の花で、見たものの悪行を払う、とされています。
あれ、「純白の花」じゃ、≠彼岸花ということになってしまいますが、サンスクリット語の「manjusaka」が「赤い」を意味するため、法華経が中国に渡ってからは、「曼殊沙華」は赤い花として解釈されました。
先に紹介した山口百恵さんの「曼殊沙華」のサビの部分の歌詞に
「マンジュ-シャカ 恋する女は マンジュ-シャカ 罪作り 白い花さえ 真紅に染める」というのがあります。
作詞の阿木燿子さんは、このことをご存じだったのでしょうか。それにしても花の色の解釈の変化を、女性の情念の変化として「白い花さえ 真紅に」とするあたり、すごく奥深い歌詞だと思います。
「曼殊沙華」だけでこの稿が終わってしまいましたが、彼岸花の別名、続きます。