菊の文字に「丸く握ったような形をした花」の意味があることは以前ご紹介しました。一つ一つの花びらが湾曲した集合体が「菊」を形どっているわけですが、「厚物」はその最たるもので、いわば「でっかいお握り」といっていいでしょうか。
この項で紹介する「管物(くだもの)」は「握ったような形」をしていません。その意味では「異端」かも知れませんが、こちらも大菊の一大品種として多くの愛好家がおられます。
管状になった花びらを管弁(くだべん)といい、花の中央から直線的な管弁が放射状にのびているものを「管物」と呼んでいます。中央に近い管弁は先端が内側に巻いたような「玉巻(たままき)」となります。このあたりは「菊」の性質が残った感じです。一方下方の花びらは走弁(はしりべん)となって四方に長く伸びます。打ち上げ花火を連想させるような形ですね。品評会では「厚物」が豪壮さを競うのに対して、「菅物」は優美さを競うようです。
「管物」はその管弁の太さで品種が分けられます。
太管(ふとくだ):管弁が最も太い(4mm前後)ものを指します。元々「厚走り」や「太抱え」の花びらが管の形になったものです。まだオーソドックスな菊の形を残しており、想像ですが、「管物」の最も源流はこの形状ではなかったかと思います。
間管(あいくだ):太管と、次に紹介する細管との中間にあたります。管弁の直径は2~3mmのもの。太管に比べて、だいぶ「異形化」した感じですが、管弁の開くバランスがとれたものが名品とされます。
細管(ほそくだ):管弁が間管より細いもの(1.5~2mm)を指し、「糸管」とも呼ばれます。花びら自身の重さで、下部に伸びた管弁が垂れ下がるので、大型の菊では花の形を支えるための輪台が使用されることもあります。
さら管弁の細い「針管」というのもあるようですが、手元に写真がありません。「管物」についてはここまで。
次回は「一文時菊」と「仕立て」についてご紹介していきます。