おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

待つの労苦2

この刃傷事件に居合わせて、吉良に切りつけた浅野を取り押さえたのが、旗本の梶川与惣兵衛頼照(かじかわ よそべえ よりてる)でした。

梶川は大奥御台所(将軍綱吉の正室信子)付き留守居番を務めていましたが、この日の式典の時間が諸事情で早まったことから、その詳細を訊こうと吉良を探していました。

大広間から白書院の方を見たところ、吉良が白書院の方から自分のいる方向にへ向かって来られるのが見え、こちらからも近づいて、松の廊下の曲がったところにある角柱から6間から7間ぐらいのところで吉良と対面していた、といいます。吉良に「本日の勅使様の刻限が早まったのでしょうか」と問うたところ、吉良の後ろから、何者かが「この間の遺恨を覚えているか(此間の遺恨覚えたるか)」と吉良に斬りかかったのでした。

松の廊下近辺 フキの花が咲いていました

驚いた梶川が、誰かと思って見たところ。それは浅野内匠頭でした。吉良がは後ろのほうへ逃げようとしたところを浅野が追いかけます。また二回ほど斬られ、吉良がうつ向きに倒れました。梶川は浅野内匠頭に組み付き、刀を取り上げて床に押し付けて動けなくしてから周りの人々とともに取り押さえます。こうして吉良は額などに傷を受けながらも、この危難から逃れることができました。

取り押さえられた浅野は「上野介には恨みがある。殿中であること、また今日は儀式であることに対して恐れ多いとは思ったが、仕方なく刃傷に及んだ。討ち果たさせてほしい。」と何度も叫びます。しかし周りから「もはやことは終わった、おだまりなさい、あまりに大声が過ぎますぞ」といわれ、その後は黙ったようです。

浅野が吉良に斬りつけた時に発した「此間の遺恨覚えたるか」という「遺恨」が何だったのか、当時からいろいろな憶測があります。浅野はなぜ江戸城内、殿中での人情に及んだのか、次回はその説をいくつか紹介したいと思います。