おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

燃える松根(しょうこん)

エンジンが詰まる、ということはガソリンとしての揮発性が足りていないということなのか、戦時中の飛行機に急旋回を禁じる、というのは無理な話で、余り実用性はなかったという結果に終わりました。海軍でも双発ジェット戦闘機「橘花(きっか)」の燃料に松根油を含有する低質油を使用し、テスト飛行に成功しています。が、貯蔵した燃料が5月29日の横浜大空襲で失われ、実戦に使用されることはなかったようです。
当時この計画に関わった人々は大真面目に燃料不足をなんとかしようと考えたのでしょうが。当時「200本の松で航空機1機が1時間飛べる」というスローガンで動員を行ったようですが、10機10時間だと100倍の2万本必要な計算となり、なかなか膨大な話です。

労働力確保のため人員徴用に発行する「徴用告知書」 九段下「昭和館

実際、この計画前に仙台市にあった松原街道の松並木は計画後松根油採取のため、全て伐採されてしまいました。一方で高知県幡多郡大方町入野の松原は、県立公園の防風林があり、同様に軍の用材に伐れと言われましたが、軍に抗ったことで現在も松原が残っています。

国家に資源も労働力も差し出す時代でした 昭和館

戦中に製造された松根油が、戦後民間に放出され代用ガソリンとして使用されたようです。「バタバタ」ともいわれたオートバイの燃料として使われた記録もあります。軍用飛行機と異なり、急旋回も上昇降下もしないので大丈夫だったのでしょうか。

しかし、進駐軍ジープにこの松根油を用いてみたところ、数日でエンジンが止まってしまったといいますから、粗悪なガソリン以下の燃料だったのでしょう。

松から採取される油と戦時中の日本の話になってしまいました。次回は通常の「マツ」の話に戻ります。