おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

暮らす松吊りー2

兼六園式」の雪吊りが、元々リンゴの樹の枝が、実の重さで折れないようにする工夫を松に応用して行われるようになったことは前回ご紹介した通りです。「雪吊り」の名前の通り、芯柱から張られた縄の先は、枝に直接結びつけられています。

兼六園式」雪吊り(芝離宮公園)

吊り下げられた縄で直接枝を支えるわけですから、実用的にはもっとも理にかなっているのがこの方式と言えます。また、吊り下げ方の美しさを考えると、枝のどこに縄を結ぶかを美しさと実用の両面で考える(デザインする)技量が職人さんに求められるのかと思います。

吊り下げられた縄は枝に結び付けられています

一方、東京の場合は雪国ではないことから、そこまで実用性は求められておらず、芯柱から降ろされた縄を枝に直接結びつけることはしません。松の幹から延びた枝のシルエットに合わせて裾の部分に「ブチ」と呼ばれる桟を設けて縄を結びます。

芯柱から降ろされた縄は竹の「ブチ」に結ばれています

これだけだと傘が少しすぼまったような感じですが、枝を支えるための「骨組み」として「カンザシ(バチとも)」呼ばれる竹が、幹と「ブチ」をつなぐように組まれます。

枝そのものを縄で支えていないので、実用性としては劣りますが、デザインとしての「雪吊り」は、放射状に張られた縄(約60本)とそれぞれの樹の形に合わせた「ブチ」の造形をどのようにするか職人さんのセンスが求められます、

東京都の庭園で見られる「雪吊り」は「北部式」と「南部式」に分けられます。この形式の相違は、かつて庭園を管理していた公園緑地事務所(北部・南部)の管轄する庭園でそれぞれ工夫された結果、形式が異なったものだということです。

では、「北部式」「南部式」が実際にどのように異なるか、については次回ご紹介します。