「根回し」というと、一般的に使われるのは「交渉や会議などで、事をうまく運ぶために、あらかじめ手を打っておくこと。下工作。ということですね。「うまく根回ししておいてくれ」とか「根回しが足りずに反対派を抑えられなかった」などと使われます。なんとなく「談合」とも共通するイメージを持った言葉です。
が、「根回し」には、本来別の意味があって「 樹木などの移植の1、2年前に、広がった根を根もとを中心に残して切り、細根の発生を促すこと。」をいいます。
二代目「御行の松」移植の話は、実際のところはわからないものの、話が持ち上がってから、すぐに植樹の式典が行われているような記述になっています。
とすると「移植の1、2年前に」必要な「根回し」の期間が足りなかったのではなかったのではないでしょうか。季節的にも松の移植の時期として最適とはいえませんでした。
残念な結果となった二代目ですが、幸い三代目と四代目は今も育っています。(大きく育ちそうなのは四代目のように見えますが)
この不動堂を訪れると、この境内が都会に珍しく地元愛にあふれた空間なのが伝わってきます。「御行の松」ぜひその愛情に応えて数十年、数百年後に名松となってもらいたいものです。
松を枯らせてしまう原因は他にもあります。このブログで「横綱の松」として紹介した善養寺「影向の松」に対して西の横綱とされ、日本一を争った香川県さぬき市真覚寺「岡野の松」。樹齢500年以上、幹周り9mあり、少年時代の平賀源内が子供時代に登って遊んでいたといわれます。残念なことに平成五年(1993)に枯死してしまいました。
wikipediaによると、「病虫害の被害に遭ったため、樹木医や庭師が懸命に治療した甲斐もなく1993年5月20日に岡野マツは枯死してしまった」とあります。
「菰巻き」をご紹介する項で、マツケムシについて少し触れました。この毛虫は松の葉を食べるので、大量発生すると葉が食い荒らされて松葉への食害量が6割を越えてくると樹勢が衰えるようです。
しかし、放置された松林ならともかく、人の手の入った松は、そうなる前に駆除されるのが普通です。それでは「岡野の松」を枯死させてしまったのは何なのか、次回は「マツノザイセンチュウ」についてお話します。