おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

運河向いてる18

信長が宗久に堺の鉄砲鍛冶の統制権を与えたことで、堺での鉄砲生産はさらに発展していきます。もともと今井宗久自身が「これからは鉄砲の時代になる」と予測をしていた人物でもありました。特権を与えられるより二十年も前の天文十七年(1548)には火薬の原…

運河向いてる17

親信長派の今井宗久が会合衆の中で中心的な存在となると、これまで反信長的な立場であった「能登屋」「紅屋」たち旧主流派は力を失います。「黄金の日々」初回でも宗久と語らっていた納屋宗易(千利休)や。当初は反信長ではあったものの鞍替えして信長に接…

運河向いてる18

永禄十一年(1568)に足利義昭を奉じて上洛し、その際堺の街に二万貫の矢銭(軍資金)を要求し、堺がこれを拒否して対立姿勢をとったことはこの稿の中でもご紹介しました。史実では防備のために武者を雇った他、堺と同じような自治組織のある平野郷に同盟を…

「べらぼう」と写楽

堺の話の途中ですが、本日11月16日に放映された大河ドラマ「べらぼう」の話を。 第44回「空飛ぶ源内」で獄死した平賀源内が生存しているのでは・・という疑問を呈しながら、仇敵であった「あの人」と再会し仇討ちをもちかけられるところで「次回」となりまし…

運河向いてる17

助左衛門が続けます フロイスというパーデレが教えてくれました ルソンか、良かろう、まずそのルソンという島に行こうじゃないか はい! 武将をやめて商人になる夢を語り合います そしてそのルソンの産物を独占するんだ、住民とも親しくして彼らが欲しがって…

運河向いてる16

第5回の「退却」6回の「狙撃」では、殿を務める木下藤吉郎を巡ってのやりとりが描かれます。急遽退却を決めた信長には「殿をお命じください」と藤吉郎は決死の覚悟を示して主従のつながりを柴田勝家、明智光秀や徳川家康との同僚(家康は同僚とは違いますが)…

運河向いてる15

「黄金の日々」初回を見直してみて思ったのが、冒頭から主人公を取り巻く人物像が巧みに織り込まれていたこと。大河ドラマのような長期にわたるドラマでは、視聴者が主人公や周辺の登場人物に感情移入する時期はなるべく早いほうが良いに決まっています。そ…

運河向いてる14

昭和五十三年(1978)の大河ドラマ「黄金の日日」の初回あらすじご紹介の続きです。(これを全回分やるつもりはありませんのでご安心を)奉公人の中から集められた「死んでも悲しむ身寄りのいない」数人の若者たちを前に宗及は次のように告げます。命の惜しい…

運河向いてる13

宗易(利休)の家に立ち寄った宗及を待っていたのは、京都から逃れてきた小西隆佐(演:宇野重吉さん)でした。会談する3人の前には2つの茶器が置かれています。 千利休屋敷跡(堺市「利晶の杜」の向かい) 1つはひと抱えあるような大きな壺で「松島の葉茶壺(はち…

運河向いてる12

wikipediaで「黄金の日々」の項を見ると 従前は武士を主人公に取り上げた作品がほとんどだったが、今作では初めて商人を主人公に据え、庶民の暮らしと経済面から時代を描く物語の展開となった。 とあります。堺の商人たちが如何に戦国大名、天下人といった支…

運河向いてる11

京都で布教の許可を得るという成功には、ヴィレラが学習意欲が高い人物であったということがあげられます。通訳なしで教えを説くことができるほど日本語を習得していただけではなく、日本文化や仏教の宗派や教義、歴史についても知識を持っていました。日本…

運河向いてる10

日比屋了珪は京都にいた同じ堺の豪商、小西隆佐(こにし りゅうさ)宛の紹介状をザビエルに持たせていました。隆佐は薬種問屋を営み、主に京都で活動していたのです。ちなみに豊臣秀吉に仕え、肥後国(熊本県)南半分の大名となった小西行長は隆佐の次男にあ…

運河向いてる 特別編 ヴェネツィア

旧PCがウィンドウズ11へのアップデートに耐えられないため、新たに買ってセットアップしたものの、それに時間がかかってしまい、土日更新ができませんでした。 一応更新する気はあるので、ヴェネツィア編でアップしなかった写真を何枚か紹介してお茶を濁しま…

運河向いてる9

先のように堺について語ったガスパル・ヴィレラは、前年の永禄三年(1560)に足利十三代将軍の義輝から、京都でのキリスト教布教の許可を得ています。彼は堺を訪れた二人目のイエズス会宣教師でした。では最初に訪れたのは、というと日本にキリスト教を伝え…

運河向いてる8

愛読しているコミック、ゆうきまさみ先生の「新九郎、奔る(はしる)」は、伊勢新九郎盛時(いせしんくろう もりとき、後の北条早雲)の物語です。少・青年期の応仁の乱あたりからスタートし、20巻で細川政元による将軍のクーデターが発生、最新刊(21巻)で…

運河向いてる7

前回、文明年間に遣明船が堺から出航した、とご紹介しました。「応仁の乱」は応仁元年(1467)から文明九年(1477)まで続いており、この戦乱が堺の街に利をもたらしたと言ってよいでしょう。これは戦乱により瀬戸内海を通る海上ルートが避けられ、九州~四…

運が向いてる6

要衝として栄えた、とはいっても歴史の表舞台に立つほどのものではありません。堺の地にも港はあったものの、漁港としての発展にとどまっていたようです。平安時代の近畿地方における国際貿易の拠点(日本全体では大宰府でしょうが)はというと、遣唐使の時…

運が向いてる5

環濠都市(集落)の話の前に、「堺」の地名の由来からご紹介していきます。漢和辞典で「堺」の文字を調べるとさかい。くぎり。土地のさかいとなる所とあります。もこの地が摂津・河内・和泉国の境にあることに由来し、平安時代から「境→さか井→堺」という変遷…

運が向いてる4

水路のある街として「ヴェネツィア」の紹介から入ると、日本で最初にご紹介する都市として「堺」を選ぶのは、誰もが納得されるところではないでしょうか。 16世紀後半に来日したイエズス会の宣教師ガスパル・ヴィレラが残した書簡に書簡に「堺の町は甚だ広大…

運が向いてる 特別編 栃木と歌麿

「東洋のヴェネツィア」堺の話に入るところでしたが、突然ですが本日訪れた(四回目ですが)栃木の話をします。水運で栄え、街並みに水路が通るという点で、このシリーズでも紹介する予定の街です。 三週間前、浅草にある「べらぼう 江戸たいとう大河ドラマ…

運が向いてる3

「水のあるところに建物を建てる」という意味を理解するためには、もう一度都市国家がなぜこの地に成立したか、その成り立ちをたどる必要があります。 6世紀後半、ゲルマン系の部族にあたるランゴバルド人がイタリア半島に侵入し、ミラノを拠点とした「ラン…

運が向いてる2

これまでずっと日本国内の話題でしたが、運河・舟運で栄えた街(国)の話をするのに、ヴェネツィアを避けて通ることはできませんのでお付き合いください。 ヴェネツィア=ベニス、「ベニス」は英語の発音です。シェイクスピアの「ベニスの商人」(原題「The …

運が向いてる

ようこそのお運び、厚く御礼申し上げます。 「運河」をwikipediaで調べると 船舶の移動のために人工的に作られた水路というふうに定義されています。更には運河には河川湖沼を連絡する内陸運河と海洋間あるいは海洋と内陸水路とを連絡する海路運河があると、…

時の流れに火をまかせ~21終

多くの参拝者でごった返す浅草寺境内ですが、本堂裏は訪れる人も少なく、本堂前の喧騒が嘘のようです。ここには享保十九年(1734)に建立された法華経供養塔や、水難で亡くなった息子の供養のために寛政九年(1797)に建立された「一葉観音」などが並んでい…

時の流れに火をまかせ~20

新橋から浅草観音裏の吉原までは新橋~横浜間の鉄道が開通したのが明治五年(1872)で、そこから約40年が経過していますが、まだ東京駅は開業しておらず、東京の北への玄関口「上野駅」と東海道線の玄関口「新橋駅」は鉄道では繋がっていません。 新橋から吉…

時の流れに火をまかせ~19

吉原大門は焼け落ちて左右の門柱だけになってしまい、遊郭から出た火は四方に燃え広がりますが、特に東北方向への延焼被害が大きかったといいます。 現在の吉原大門 現在は「門」という感じではありませんね 火は日本堤をも越えて日本堤警察署をも焼き払って…

時の流れに火をまかせ~18

望楼=火見櫓からの発見が遅れた、という話に戻ります。出火が午前十時三十分という時間帯で、じかも遊郭という人の多い(そうな)場所にもかかわらず、現場で早期に見つけられなかったのかという気がします。現場「美華登楼」にいた娼妓二名の談話が記事に…

時の流れに火をまかせ~17

「烈風と望楼」のうちの前者ですが、前々回「西南の風にあおられ」とご紹介しています。どの程度の風かというと秒速約12mだったという記録があるようです。ピンとこない数字ですが、気象庁の強風の強さの目安によると、「傘が差しにくくなり、小枝が大きく…

時の流れに火をまかせ~16

火を消すためのポンプが火に包まれてしまった理由に、記事の中にもある「この辺はすべて水利不便なる上」という部分がキーワードになります。 結果として鎮火まで10時間以上かかり、吉原遊郭の全焼だけでなくその被害は周囲四方、西は下谷区竜泉寺町、東は隅…

時の流れに火をまかせ~15

出火直後から遊郭内に燃え広がる一方で西南の風にあおられ遊郭周辺にも燃え広がっていきます。(以下当時の新聞記事より)なおも日本堤に向かい土手の交番、日本堤警察署を灰燼となし、それより土手下なる地方今戸町に燃え拡がり、更に一方の火先は東町、田町2…