おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

Smoking on the water5

岸柳島(がんりゅうじま)は、古典落語の一つで、元話は安永二年(1773)の笑話集「坐笑産」中の「むだ」という一節から発生した噺です。前回ご紹介した煙管の形状を思い浮かべると噺への理解がより深まります。


現在隅田川に「厩橋」がかかっている場所は、江戸時代には橋はなく、「お厩の渡し」と呼ばれる渡し舟が東西岸間の往来の便を担っていました。
この場所、西岸には「浅草御蔵(あさくさおくら)」という幕府が管理する米蔵があり、少し上流にはこれも幕府管理の厩屋もあって結構な要所でした。因みに「蔵前」の地名は、この河岸近辺を「おくらまえ」と呼んでいた事に由来します。

(この先演目のネタバレとなりますのでご注意ください)


さて、この渡し舟が、船着場から出ようとする直前、年の頃二十三四の侍が舟に飛び込んできます。今でいうと「駆込み乗車」、いや乗舟といったところでしょうか。侍は横柄な態度で周りを押しのけ、舟べりに陣取ります。

渡し舟(これは矢切の渡しの渡船です)

舟は岸を離れ対岸を目指して進んでいくところ、侍は煙管で一服。吸殻をはたき落とそうと、煙管で舟べりを叩いた瞬間、羅宇と雁首のつなぎ目が緩んでいたのでしょうか、煙管の雁首が外れて川の中へトポン。

「雁首」が川の中へ落ちてしまいます

若侍は「雁首を探すから、ここで舟を止めろ」と船頭に命じますが、船頭から、「この辺は川底まで深い場所です。その上今は引き潮で流れも早く、小さな雁首一つを探すなど、とてもとても」
若侍はいかにも残念そうに水面を眺めます。すると舟に乗り合わせた屑屋が、よせばいいのに商売っ気を出して、「雁首のないその煙管、買い取らせてもらえませんか?」などど言ったものですから、これが若侍の逆鱗に触れてしまいます。

「無礼者!そなたのような町人に侮られるいわれはないわ、落した雁首と引き換えに、お前の雁首をよこせ!」と屑屋を無礼討ちにする、と激高します。

舟の上は蒼然としますが、その続きは次回に。