おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

Smoking on the water6

武士による「無礼討ち」というものが認められていた時代です。

屑屋は真っ青になり、ひれ伏して非礼を謝りますが、若侍の怒りは収まる様子を見せません。周りの乗客も「関わり合いになって自分の命が危うくなっては」と黙ってしまっています。中間に槍を持たせて舟に乗っていた七十過ぎのお武家が、この様子を見かねたのか仲裁に乗り出します。

煙草と煙管

「お腹立ちはごもっともだが、取るにも足らぬ町人を手討にしたところで貴殿の恥 周りの方々も迷惑いたす 屑屋になりかわって拙者もお詫びいたすゆえ、どうか勘弁願いたい。」
ところが若侍は仲裁に応じるどころか、余計に怒りだし、今度はお武家に果し合いを挑む始末。
最初は相手にせず、断っていたお武家ですが、若侍のあまりのしつこさに、「それではお相手するが、ここ(舟の上)では皆が難儀(迷惑)するゆえ、岸に戻ってそこでお相手いたそう」

今なら、車内(舟内)のトラブルで渡し舟大幅遅延、といったところでしょうが、この時代には運行ダイヤはありません。舟はもと来た桟橋に向かって戻ります。
舟の上では、周りの乗客が野次馬根性丸出しで、どっちが強い?「そりゃ若い侍よ」など、勝手に談義したりしています こういう野次馬の騒ぐ下りと、果し合いが始まろうとする緊迫した雰囲気との緩急・落差で噺家巧拙が出るような気がします。
そうこうしているうちに舟は起点の桟橋近くまで戻ってきました。
若侍は、さあ勝負だとばかり、舟から桟橋に飛び移りますが、お武家は降りようとはしません 若侍が飛び移った反動で舟が少し岸から離れたタイミングで、手に持った槍の石突(穂先とは逆の根元の部分)で岸をとん、と突きました。
見る見るうちに舟は岸から離れます 桟橋には置き去りにされた若侍が一人・・。

あ、一人桟橋に遺された・・・

慌てて「卑怯者、もどってこい」と叫びますが、当のお武家は、「これがすなわち巌流島(がんりゅうじま)の計略じゃ」

周りの乗客は拍手喝采、取り残された若侍に向かってはやし立て、からかいます。すると、若侍やにわに裸になると短刀を口にくわえ、川に飛び込みました。

舟縁に浮かび上がった若侍に、お武家は「欺かれたのを無念に思い、ここまで泳いで舟板穴をあけて沈めに参ったのか?」

すると若侍、「なぁに、さっきの雁首を探しに来た」

江戸時代のたばこの話はここまで。次回は明治の煙草宣伝合戦をご紹介します。