生米のでんぷんだと発酵が起こりにくいので、蒸すことで、でんぷんに水と熱を加えてゲル状に変える(アルファ化)そうです。前回の写真のような羽釜だと、何となく米を炊くことを連想しますが、炊いても蒸しても米はアルファ化します。では、なぜ「蒸す」方法を選ぶのかという疑問がわいてきます。
炊いた米は粒同士が粘ってくっつきます。米飯のおいしさはそこにあるともいえますが、一方蒸した米は粒がばらばらです。酒を造るときには米に麹菌(こうじきん)を混ぜて発酵させますが、粒がくっついていると表面積が狭くなってしまうので十分に発酵ができません。蒸すのは、アルファ化に加えて粒が離れて発酵がしやすいから、といえるでしょう。
蒸された米は冷やされたのちに、麹につかわれる米(麹米:こうじまい)と仕込みに使われる米(掛け米)に分けられます。
「諸白(もろはく)」とは、この麹米、掛け米の双方に精白した米を使うことを言い、これが現在の清酒の製法となりました。ちなみにそれまでの酒は、双方とも玄米を使った酒は並酒(なみざけ)と呼ばれ、麹米には玄米、掛け米には精白米を使った酒は方白(かたはく)と呼ばれます。
さて米を蒸した後は、
④麹つくり:蒸し米の一方、麹米は高温多湿の室(むろ)に運び入れられ、そこで種麹(たねこうじ)を振り掛けて良く混ぜ合わされます。
混ぜ合わされた米を布でくるみ、保温します。高温多湿の中で麹菌は米を栄養分にして繁殖していき、「麹米」になっていくわけです。酒造りは「一、麹 二、酛(もと) 三、造り」といわれますが、その第一段階がこの工程にあたります。
このあと工程は「酛つくり」に進みますが、それは次回で。