「酛つくり」の説明の前に、酒造りの行程で使用した写真撮影の場所について解説します。まずは伊丹の酒造りの資料館としての「伊丹ミュージアム」から。
伊丹市内にある「伊丹ミュージアム」はJR伊丹駅、阪急伊丹駅の双方から徒歩圏にあって、美術館や博物館の機能を供えながら、敷地内に「旧岡田家」「旧石橋家」という江戸時代の町屋が移築され見どころの多い施設です。
旧岡田家は延宝二年(1674)に当初の住宅が築造され、正徳五年(1715)酒蔵が店舗部分に増築されました。築年代が確実な現存する酒蔵としては日本最古のものとされています。
酒造りの行程はここの展示でほぼわかるのですが、前回の「麹つくり」と今回の「酛つくり」は、阪神魚崎駅が最寄りの「菊政宗酒造記念館」の写真で補足しました。ちなみにこれらの資料館は無料(企画展は除く)で見学できる充実の施設です。
さて、本題に戻ります。
⑤酛(もと)つくり:酛は別名を酒母(もと、しゅぼ、とも)といい文字通り「酒の元」ですが、前工程で培養した「麹」に「蒸米」「仕込み水」を半切り桶(桶を半分に切ったようなもので、寿司桶を大きくしたイメージ)に入れます。そこに酵母が加わり、桶の中で蒸米と麹の塊を櫂(かい)ですりおろすのが「山卸し(やまおろし)」という作業です。
「山卸し」により、乳酸菌が増殖し多量の乳酸が生成され、乳酸の強い酸性により雑菌は死殺してしまいますが、清酒酵母のみは乳酸に強い性質を持っているので生き残ることができるです。そして酵母増殖の過程で発生するアルコールにより、乳酸菌自身もほとんど死滅してしまいます。
今でこそ、優良な酵母のみを純粋に培養した「きょうかい酵母」(日本醸造協会で頒布される)での醸造が主流ですが、江戸時代以前は、「蔵付き酵母」「家付き酵母」により酒造りが行われました。これらは代々の醸造場の木桶・建物・床土などに残され生き残った酵母です。なんとなく、「○○家の糠漬け」などと同じイメージですね。
次回も酒造りの話が続きます。