おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

あっち行け、そっち行け、鴻池10

⑦搾り:発酵した醪(もろみ)はどろどろの白い液体の状態で、表面には無数の泡が出ています。これは、発酵によってアルコールができる際に炭酸ガスが発生するからですが、アルコール度数が10数%を超えてくると、盛り上がるような泡が次第に落ち着いて、表面が均一になってきます。

木桶の上から醪の泡を見極める杜氏のイメージ(白鹿記念酒造博物館)

この液体を搾って濾過すると酒と酒粕に分離するわけですね。ちなみに濾さないものは「どぶろく」にあたります。

搾るといっても牛乳のように手で搾るはずもありません。下の写真文字の部分をご紹介すると、

醪を攪拌して袋に入れて醡(ふね)に積む 酒上げ 澄ましの図

搾りの図(日本山海名産図会:白鹿記念酒造博物館入口パネル)

左中段に見える風呂の浴槽のようなものが醡(ふね)です。蓋がしてあって上に重しが乗っているように見えます。醡(ふね)は槽とも書くので水槽ならぬ酒槽ですね。

「袋に入れて」とありますが、柿渋を塗った酒袋に醪を入れて酒槽の中に積み重ねます。最初の方は袋の自重で酒が流れ出しますが、これを「あらばしり」と呼んでいます。どぶろくに似て白濁し、炭酸ガスを含んでいることが多い酒で、荒々しくフレッシュさのある味わいです。

自重だけでは酒を搾り切れませんので、重しを置きますが、図では右上で綱に石が結わえつけられ、何人かがそれに掴まっています。実際の器具でいうと下の写真のように、てこの原理で酒槽に大きな圧力をかけます。

あらばしり」のあとは「中汲み」といって最もバランスが取れた酒といわれます。そのあとは「責め」「後取り」「押し切り」と続きますが、香りや味わいは「中汲み」と比較すると下がります。ネーミングがいかにも「搾り切った」という感じで変化していますね。

てこの原理で酒を絞り出します

この酒槽は実物を伊丹や菊正宗の資料館でも見ることができます。

上の図の酒槽の下部に酒の出口があり、それを汲んで別の桶に移しています。この後の工程を経て日本酒(清酒)が完成するのですが、それは次回に。