おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

あっち行け、そっち行け、鴻池11

⑧澱(滓)引き・濾過・火入れ

⑦の「搾り」によって日本酒の部分と「酒粕」の部分に分離されます。酒造りの盛んな阪神間灘地方では、新種の季節になると酒粕も出回ります。45年以上前に亡くなった祖父はトースターで酒粕を焼き、砂糖をふりかけて食べるのが好きでした。子供の舌には酒っぽさが苦手で手を出しませんでしたが。

さて、搾った酒は大桶に移されます。この時点でまだ不純物が多く混じっていますので、数日間はここで寝かせます。

大桶 下のタガの部分に蛇口のようなものが見えます


そうすると、不純物が澱(おり)となって沈んできます。上澄みの部分を汲みだし、沈んだ澱の部分は取り除いてしまいます。この上澄みの部分が商品化される前の「原酒」ともいえる部分ですが、ここにもまだ色がついていて雑味も残った状態です。

澱引きの様子を写した写真

鴻池で今と同じ「清酒」が作り出されたのは、この先の「濾過」の工程が入っているからだと考えます。というのも、現在においても濾過の工程において、

・活性炭素の粒を清酒に混入して異物を付着させる方法

があるからです。ここでやっと、「灰を入れた翌日、桶の中の酒が澄んで・・」という伝承が実際のものとなって出てきました。要は腹いせのつもりで投げ込んだ灰が不純物と結合して下に沈み、上澄みの酒が旨くなったという現象が起きたのでしょう。

「濾過」を経て、濁りや雑味が取り除かれても、酒の中の酵素はまだ生きています。ということはまだ活動を続けているわけで、そのまま放っておくと糖化が進んでしまいます。すると当初作った酒より甘さが増して味のバランスが崩れる「甘ダレ」や、「ムレ香」といわれるにおいの変化をもたらし、酒の品質が劣化してしまうわけです。

それ以上に恐ろしい現象が「火落ち」。この言葉は昨年の朝ドラ「らんまん」でも、主人公の実家の造り酒屋を廃業に追いやりました。その現象については次回で。