おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

あっち行け、そっち行け、鴻池9

⑥仕込み:ここのところの良さげな写真が見つからず、本日西宮にある「白鹿記念酒造博物館」に行ってきました。これまでご紹介してきた資料館等と異なり有料(この博物館と別棟の記念館と共通で500円)なだけあって、映像・音を含めて「これでもか」というくらい詳細に酒造りについてガイダンスしてくれます。

阪神西宮から約10分のところにある「白鹿記念酒造博物館」入口

酛、は前にもご紹介したように「酒母」とも書きます。ここからはこれを「酒」として「仕込む」作業が行われます。酛に麹と蒸米、水を加えて発酵させ「醪(もろみ)」を作りますが、3回に分けて4日間かける「三段仕込み」というのが一般的な方法です。

仕込みの図(日本山海名産図会:白鹿記念酒造博物館入口パネル)

なぜ3回に分けるのか、これは一気に発酵させようとすると、酛の酸性が薄まってしまい雑菌が繁殖しやすくなってしまうから。雑菌は酒を劣化・腐敗させてしまうので、それを避けるために樽の中の酵母の様子を見ながら、段階的に仕込みを進めていきます。

加えることを「添える」ともいいますが、4日間で行う三段仕込みの最初の段階を「初添(はつぞえ)」といいます。

「添」樽に酛(酒母)を移し、そこへ麹、蒸米、水を加えます。

このときに加える麹、蒸米、水の量は酛(酒母)の2倍程度。櫂棒(かいぼう)で桶の中をよく混ぜ、発行を促していきます。ここで加える蒸米を「掛け米」といい、「諸白(もろはく)とは、前にご紹介した通り、「麹米」「掛け米」の両方に精白米を使用した酒造りの手法です。

2日目が「踊り」といわれる工程で、「添」の字が使われていないことからわかるように、ここでは何も加えません。加えた蒸米は水を吸って膨張してきますので、櫂棒で混ぜ続けてさらに酵母菌を増殖させます。

杜氏は発酵の際の泡などから、その度合いを見極めます

3日目、二段目の仕込みとなる「仲添(なかぞえ)」です。麹、蒸米、水の量は「初添」の時の倍量を加えます。

4日目、最終の「留添(とめぞえ)」で、「仲添」のさらに倍量を加えて発酵させます。三段仕込みで加えられる麹、蒸米、水の量の割合を、当初の酛(酒母)を1とした場合、

1(最初・酛)+2(初添)+4(仲添)+8(留添)ということで、最終的に加えられる量は14倍ということですね。上のような大きな木樽が必要になるのも道理です。

ここで「醪」ができると、ついに酒を「搾る」工程に入ります。その話は次回で。