おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

果てには茶碗~鴻池の粋5

「わて、今宮から来ました」

「今宮、そらまた遠いとこから来たんやな、なんでまたそんな遠いとこから?」

解説すると「今宮」というのは、今宮戎神社のあるあたりです。「今宮村」ということからも大坂の市街地から見ると南のはずれ、といったところでしょうか。クロが不思議がるのも無理はありません。

西宮戎と共に十日戎で知られる今宮戎神社

病犬が言うには、四、五日何も食べておらず、おなかの空いいたとのこと。そこへ、どこかの丁稚さんが、買い食いした焼き芋の皮をほった(捨てた)のを食べては、次の皮がほられるのを待ってついていったところ、こんなところまで来てしまった、というのです。

「そうか、そんでお前、生まれは今宮か?」

「いえ、わたい生まれは船場でんねん」

「なに、船場、生まれ船場いうたらわしらと仲間やないかい、船場はどこや?」

「南本町ちょっと入ったところ、用水桶があったとこでんねん」

病犬の生まれは南本町の用水桶でした

「用水桶?あったなぁ、そこに質屋がなかったか?」

「はぁ、角に質屋がおまして、わてそっから三件目の竹内さんていううちで生まれたんです」

「竹内さん?お前に兄弟はなかったか?」

「わたい、上に兄さんが二人いてはりましたんやけど、一番上の兄さんは幸せなお方で、鴻池さんとこにもらわれて行きはりましてん、で、二番目の兄さんは、おもてに出んなよいうて言われてたのに、おもてにパーっと飛び出して、大八車にバーンとはねられて、キャーンっていうたのがこの世の別れで・・」

その後一匹残ったぶち犬はそのまま飼ってもらっていたものの、悪い友達(犬)から盗み食いや拾い食いを覚え、それがやめられなくなり、そのうちに病を得て毛が抜けてしまったのでした。毛が抜けてからは丁稚たちも買うのを嫌がり、挙句の果ては自転車に載せられて遠出をしたついでに捨てられた、というのです。(「自転車」が出てくると時代は何時?と突っ込みたくなりますが、ここはスルーで)

病犬は、三匹の内のぶち犬、クロの弟でした。生き別れた弟との再会です。

この続きは次回に。