おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

トゲと薔薇の日々3

「ミスターローズ」鈴木省三(すずきせいぞう)さんは、大正2年(1913)に小石川に生まれました。肺にリンパ腺炎を患い、医者からは、「軍事教練や体育の時間などは休むように」言われるような少年期を過ごしました。天文学者に憧れ、それを目指そうとした時期もあったようです。しかし、数学が苦手で、天体観測後の微分積分の計算が大変なことがわかり、あきらめざるを得ませんでした。

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京成バラ園の鈴木省三さんのレリーフ

父親が植物が好きだったこともあり、小石川植物園や上野公園など、よく一緒に花を見に出かけていたそうです。子供のころ印象に残った話として、飯田橋の先にあった花屋さんが全体がガラス温室のつくりだったこと。また看板にあった「Say it With Flowers」という言葉も合わせ、とてもハイカラな雰囲気だったことを挙げられています。

父親が「これは花で心を伝えましょう、という意味だ」というのを聞き、「私が最初に覚えた英語は、この言葉であったろうと思う。」と思い出しておられます。

世田谷区深沢の東京府立園芸学校(現・東京都立園芸高等学校)に進み、卒業後、見習い生活を経て、昭和13年(1938)に世田谷区奥沢に「とどろきばらえん」を開園し、薔薇の生産と育種を始めました。

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生誕100年を記念して作出された「ミスターローズ」(京成バラ園

この年は、日中戦争が2年目に入り、国内では「国家総動員法」が施行され、東京オリンピック開催権を返上するなど、第二次世界大戦・太平洋戦争に向かう時期でした。

戦争が終わるまでの間、敵国の花であるがゆえに表立って生産することができないばかりか、「敵国の花を作るとは何事か!」と非難されたこともあり、苦難の道をたどっておられました。

鈴木省三さんの話、続きます。