ドラマ「大奥」でも、松下奈緒さん演じる田沼意次が、上意によって老中職を罷免させられます。同時に「ご城中のご様子何らお変わりございません」と告げられ、「上様は、もう」と家治逝去を悟りました。
意次の老中職罷免のタイミングはまさに史実の通りで、家治の死によって反田沼派の動きが一気に加速、老中の罷免とともに登城の際の控える席も雁間(かりのま)まで降格されました。雁間は城を持つ大名が控える部屋としては最下級の場所です。
追い打ちをかけるような幕府の苛烈な仕打ちが続きます。家治によって加増された2万石分は没収、大阪の蔵屋敷の財産没収、江戸屋敷の明け渡し、蟄居と再度の減封、最後には領地相良城が幕府の命令により打ち壊されました。
「大奥」では意次の失脚から、江戸城内で「人痘」を広めていた蘭方医青沼(演:村雨辰剛さん)は死罪となり、周囲の協力者たちも大奥を追放されてしまいます。このあたり田沼意次やその派への仕打ちと重なりますね。ちなみに追放された青沼の右腕、黒木(演:玉置玲央さん)は、病床にある平賀源内(演:鈴木杏さん)の元を訪ねますが、史実では源内は田沼失脚の9年前に小伝馬町で獄死しています。
ただ、源内を見舞った後に、黒木が雨の中で慟哭するシーンは、青沼の最期と併せ「泣かせ場」として見どころです。
そしてその雨の中、一橋治済(仲間由紀恵さん)と松平定信(安達祐実さん)とのやりとりが並行します。定信を老中にと告げ、徳川の血を引くもので政を行っていきましょうと告げたのち、「息子には人痘を受けさせたのよ」と微笑む表情にはうすら寒さを感じさせるものがありました。
その回(第13回)のラスト、中村蒼さん演じる家斉の時代となりますが、家斉が将軍となったのは15歳のこと。次回も治済と家斉(今回はほとんど出ていませんが・・)の話が続きます。