おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

小柄な鼠が金盗って誅9

鼠小僧が庶民に人気があったのは、一つには、盗みに入ったのが武家屋敷(主に大名屋敷)だけだったこと、また徒党を組んで押し入ることなく殺生もしなかった、という点が挙げられます。これについては、本人に言わせると、大名屋敷は敷地が広大で部屋数も多いわりに、主に男性が仕事をする表向きに比べ。女性が中心の奥向きは警備が手薄で、発見されても逃げやすかったことが理由のようです。裕福な商家はそれなりに奉公人が多く、用心もしっかりしていましたので。更には武家屋敷では被害が出ても、公にするとお家のメンツが丸つぶれ、ということで、届を出さずにすませる、というメリットもありました。決して権力に反抗する意図などはなかったようです。

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両国回向院 鼠小僧のお墓 前回より近づいた写真です

また、盗んだお金を貧しい人々に分け与えた、というのも、彼の普段の生活が実に質素なものだったからですが、真実ではなく、実際には賭博・遊興で使い果たしたというのが定説になっています。ただ、捕まる直前(予感があったのでしょうか)に妻や妾達に離縁を申し渡し、誰も連座させずに一人で刑場の露と消えた、、というのも人気の一因といえるでしょう。

鼠小僧のお墓は、長年捕まらなかった彼にあやかりたい人が、墓石を削り取って金運のお守りにしてしまうため、お墓の前に「お前立ち」を置き、そちらを削るよう案内されています。しかし、長らく捕まらなかったとはいえ、結局は捕縛され極刑に処され、盗んだお金も博打ですってしまっているわけですから、本当にご利益があるのかどうか・・・

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両国回向院 猫塚

鼠小僧のお墓の隣には、猫塚があり、鼠と猫が対比されています。

こちらの猫も、商家から2両を盗んで可愛がってくれていた魚屋(病気で体を壊し、生活に困っていた)に恩返しをした猫が祀られたものです。

鼠小僧の下り、以上で終わりですが、回向院の余談について次回触れさせていただきます。