おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

拍手!青松

「白砂青松」という言葉は、その字の通り白い砂浜と青い松林の風景で、日本の海岸風景の美しさを表す言葉です。昭和六十二年(1987)に「日本の白砂青松100選」が選定されています。関東から13ヶ所が挙がっていて、東京都からも二か所!と調べてみたところ、大島町新島村という諸島部の海岸でした・・。東京の本州部は全て埋め立てられていて、自然の砂浜と松林が残されていないのでしょう。

お台場には松並木的なものはありますが・・・

比較的東京に近いところでは、神奈川県の「湘南海岸」と千葉市美浜区稲毛海浜公園の「磯の松原」などが選定されています。千葉県・茨城県の9ヶ所のうち内房側は「磯の松原」と「富津岬」だけで、あとの7ヶ所は太平洋外洋に面した海岸です。

100選の一つ、茨城県の五浦海岸

日本絵や着物の柄などに描かれる、「白砂青松」の典型像を「住吉模様」といいますが、これは大阪住吉大社前の砂浜の風景を描いたものだそうです。住吉大社は残念ながら参拝したことがないのですが、グーグルマップで見ると、海まで数キロの距離があり、こちらも埋立ての影響でしょう。ちなみに大阪からの100選は、貝塚市の「二色浜公園」で、だいぶ南に下がったところです。

さて、松はなぜ海岸に多く生えているかですが、元々自生するものもありますが、人工的に植えられた者が殆どです。

まず、自生する松について。海岸で松林を形成しているマツの殆どはクロマツです。海の近くでは波しぶきがあがり、更に海からの風に乗って樹木の葉に付着すると普通の植物は枯れてしまいます。その意味でクロマツは普通ではなく、塩害に強い樹木の一つで海岸でも育つことができるのです。

佐賀県唐津市 虹の松原

一方、海の近くに住む人々にとっても、海からの風や、それによって飛んでくる砂を除けるために樹を植える必要がありました。「防風林」とか「防砂林」のために選ばれたのがクロマツだった、ということですね。とはいえいくらクロマツが塩害に強くとも、砂地に植えた苗木は砂から水を吸い上げることは至難の業です。更には背丈の小さいうちはすぐに吹き寄せる砂に埋もれてしまいます。放っておいて勝手に育つものではありません。

苗木のまわりに竹やよしずを使った防風垣を作り,砂地には藁を敷き、水を運んで撒いてやるなどの手間をかけています。今100選としてあげられた風景は、長い期間を経て育て上げた結果の風景だということを嚙み締めたいですね。

次回から各地の立派な松をいくつかご紹介していきます。