白砂青松の松原は、松林の中に入ってしまうと一本一本にはそれほど個性がないためか、やはり少し離れたところから全体を眺めるのが良いようです。松林として全体が成長していくためには、個々の松が大きく育つのを集団が抑制しているのでしょうか。
一方で、大名庭園などでは形よく育つように整えて世話をするので、「名松」と呼ばれるものを鑑賞することができます。
面白いエピソードが残っているのが、香川県の栗林公園に行った時(8年前)の写真が残っていました。
栗林公園といえば、代表的な回遊式大名庭園として、国の特別名勝に指定され、2009年のミシュラン・グリーンブックで三ツ星評価を得た300年以上の歴史があります。園内には1,000本以上の松が手入れされていますが、その中でひときわ目を惹くのが「鶴亀の松」。樹齢は300年以上のクロマツで、上の写真ではわかりにくいですが、110個の石を組合せて亀の形に配し、その上に鶴が舞うような形をしていることからこの名がありるそうです。
この松には「百石の松」との別名があるのですが、今から二百四十年前の天明年間、高松藩第七代藩主、松平頼起の時代の話が残っています。家老稲田貞一の邸内にあったこの松を、稲田は愛するあまり手入れに熱中しすぎて登城に遅れてしまいます。藩主の怒りに触れて俸禄を百石減らされ五百石となったことからこの名前があるそうです。今でいうと趣味に没頭して会社に遅刻して減給、といったところでしょうか。
高松からずっと北の弘前城内にも「鶴の松」という立派な一本松があり。10年前の写真が残っていました。樹齢は300~500年といわれていて樹種は「アイグロマツ」。なじみのない名前ですが、アカマツとクロマツの交雑種だそうです。
こちらの松の隣に石垣が映っていますが、巨石で作られたこの石垣の中心に「亀石」と呼ばれる巨石があり、「鶴亀」と「松」で長寿を寿ぐ縁起のつながりで命名されたもののようですね。
東西、これまで見た(たまたま写真に残っていた?)名松から二つご紹介しましたが、次回以降は東京の名松をいくつかご紹介していきます。