おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

新田花実が咲くものだ7

住之江区南加賀屋にある「加賀屋新田会所」をご紹介します。鴻池新田からは話がそれますが「会所」の役割を感じとっていただければと思います。

大阪メトロ四つ橋線終点の「住之江公園駅」から南に約10分のところにあり、周辺の地名は「南加賀谷」。(ちなみに住之江公園駅の一つ手前が北加賀屋駅です)

鴻池新田が東大阪市、つまり大阪の東で海からは離れたところにあるのに対して、ここ加賀屋新田は付け替えられた大和川の河口部分に開拓された新田です。

加賀屋新田会所 長屋門 入場無料です

名前の通り、こちらも町人請負新田で加賀屋甚兵衛が請け負っています。両替商の加賀屋に奉公して35歳で独立(同じ加賀屋を名乗っているのでのれん分けを受けたのでしょう)、享保八年(1723)から新田開発を始めました。のちには両替商を辞め新田開発・経営一本に打ち込んでいます。

会所は新田経営の拠点、事務所的な役割を担います。管理者として派遣する支配人がここで新田の農民から小作料を徴収して幕府へ年貢を納入するわけです。それ以外にも新田内の田畑、水路、橋などの維持補修、改帳(現在の住民票にあたるもの)の作成、老人への孝養米(現在の年金にあたるもの)の支給という役所的な業務に加え、もめごとの仲裁など警察と裁判所の役割も担っています。

加賀屋新田会所 玄関

商人の別宅としても用いられたようで、書院や庭園が設けられており、町人文化にも触れることができます。

加賀屋新田会所 書院

書院から茶室(右側)と庭園を臨む

前回、鴻池新田は耐震工事のため改修中と伝えしましたが、この加賀屋新田会所も床板がきしむ箇所があったりして(この時見学者は私一人でした)、来年以降まで見学ができないのは残念ですが、270年以上も前の貴重な建築ですし、改修の必要性を実感させられました。加賀屋新田会所がこれだけ素敵な場所ですので、より規模の大きな鴻池新田会所、改めて見学できる日が楽しみです。

次回は「鴻池」にちなんだ落語の紹介を。