おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

果てには茶碗~鴻池の粋6

しばらく間があいてしまいましたが、弟との再会と果たしたクロのリアクションから。

病犬のみじめな境遇を聴いていたクロは、弟と町役の二匹の犬に向かって

「一丁目、二丁目聞いてくれ、これは俺が子供の時分に別れた弟や」

「え!弟はん!何とまぁ鼻筋がよう似てるとおもた」

そして兄だと知る病犬(ブチ犬)

「ほたら、あんたが兄さんでっか!面目ない」

クロは弟に対して、これからは自分が面倒を見てやることを伝え、

「病気もちゃぁんと治したる、ちゃんと言うて、何やったら温泉、有馬の湯でも行くようにしてやるさかい」

有馬温泉源泉の一つ「極楽泉源」

これが江戸落語だったら、草津の湯、になるのかも知れませんが、江戸から草津までは結構遠いのに比べ、有馬温泉は神戸の少し先、奥座敷くらいの位置にあるので手軽な湯治場だったわけです。(現在は値段が高くて「手軽に」とはなかなかいきませんが・・)毛が抜けるという症状は、盗み食い、拾い食いして食べたものが原因の皮膚病だったのでしょう。

そして、お腹を空かせた弟のために、何か食べ物をもらってきてやろう、と言った矢先、奥の方から

「来~~い来い来い来い」

と呼ぶ声が。

お、向こうで呼んでござる

「お、弟が来たちゅうのがわかったのかも知れんな、来い来い言うて呼んでくれたはる。何ぞくれはるさかいに、待ってぇ!」

と、邸の方へ飛ぶようにかけて言ったかと思うと、大きな鯛を咥えて帰ってきました。

鯛の浜焼きです、名前は聞いたことはあっても、見たこともないごちそうに、弟犬は遠慮しつつ、

「これ、兄さん食べとくなはれ、わて余った骨いただきますさかい」

クロは、自分はこういった食べ物は食い飽きているから、遠慮せず食べるよう弟に勧めます。

「あたい、いただいてもよろしのんか?」

「あぁ、遠慮せんと食え食え」

しばらくすると、また奥の方から、

「来~~い来い来い来い」

と呼ぶ声が聞こえます。クロはまた飛ぶように走っていき・・

と、この続きは次回で。