しばらく間があいてしまいましたが、弟との再会と果たしたクロのリアクションから。
病犬のみじめな境遇を聴いていたクロは、弟と町役の二匹の犬に向かって
「一丁目、二丁目聞いてくれ、これは俺が子供の時分に別れた弟や」
「え!弟はん!何とまぁ鼻筋がよう似てるとおもた」
そして兄だと知る病犬(ブチ犬)
「ほたら、あんたが兄さんでっか!面目ない」
クロは弟に対して、これからは自分が面倒を見てやることを伝え、
「病気もちゃぁんと治したる、ちゃんと言うて、何やったら温泉、有馬の湯でも行くようにしてやるさかい」
これが江戸落語だったら、草津の湯、になるのかも知れませんが、江戸から草津までは結構遠いのに比べ、有馬温泉は神戸の少し先、奥座敷くらいの位置にあるので手軽な湯治場だったわけです。(現在は値段が高くて「手軽に」とはなかなかいきませんが・・)毛が抜けるという症状は、盗み食い、拾い食いして食べたものが原因の皮膚病だったのでしょう。
そして、お腹を空かせた弟のために、何か食べ物をもらってきてやろう、と言った矢先、奥の方から
「来~~い来い来い来い」
と呼ぶ声が。
「お、弟が来たちゅうのがわかったのかも知れんな、来い来い言うて呼んでくれたはる。何ぞくれはるさかいに、待ってぇ!」
と、邸の方へ飛ぶようにかけて言ったかと思うと、大きな鯛を咥えて帰ってきました。
鯛の浜焼きです、名前は聞いたことはあっても、見たこともないごちそうに、弟犬は遠慮しつつ、
「これ、兄さん食べとくなはれ、わて余った骨いただきますさかい」
クロは、自分はこういった食べ物は食い飽きているから、遠慮せず食べるよう弟に勧めます。
「あたい、いただいてもよろしのんか?」
「あぁ、遠慮せんと食え食え」
しばらくすると、また奥の方から、
「来~~い来い来い来い」
と呼ぶ声が聞こえます。クロはまた飛ぶように走っていき・・
と、この続きは次回で。