おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

逢い焚くて逢い焚くて5

井原西鶴の「好色五人女」が刊行されたのは貞享3年(1686)のことですから、お七が放火事件を起こした天和3年(1684)の2年後ですね。「好色五人女」は5つの話から成り立っており、いずれも当時(二十数年~前年)実際に起こった男女の恋愛事件を題材にしています。

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井原西鶴像 大阪生國魂神社境内

5編の恋愛話のうち、町人の娘が主人公の話が3編、町人の女房が主人公のものが2編で、当然ながらお七の話は前者に属します。江戸が舞台の話は1編だけですが、大阪でもこの事件のことはよく知られていたのでしょう。師走の火事で一家が避難したお寺が吉祥寺に、寺小姓の名前は小野川吉三郎となっています。

大坂生まれで江戸の町を音連れたことのない西鶴にとって、駒込のお寺をを舞台にするときに、名の知れた吉祥寺が浮かんだのかも知れません。

寺で吉三郎の指にとげが刺さり、見かねたお七の母親がとげを抜いてあげようととげ抜きを使います。が、老眼で良く見えず、抜いてあげることができません。母親は娘なら目がいいから、抜いてあげられるだろう、とお七を呼びます。

お七は吉三郎の手を取り、とげを抜いてやりましたが、この事件?がきっかけで二人は恋に落ちてしまいます。うぶな二人のことですから、お互いの距離はなかなか縮まることがないまま、年が明けます。正月の松の内も過ぎた十五日の雷雨の夜、二人の間は一気に縮まります。この続きは次回で。