おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

押しかけて横浜2

6月9日(新暦 旧暦では5月4日)、品川・横浜の両駅に以下のような文書が掲示されました。

来る五月七日よりこの表示の時刻に日々横浜並に品川ステイションより列車出発す。

乗車背むと欲する者は遅くとも此表示の時刻の十五分前にステイションに来たり、切手買入其他の手都合を為すべし。

「此時間」は後述する時刻が本文に記載されていて、6月12日(旧暦5月7日)の仮営業初日は、一日ニ往復で運行しました。
一番列車は横浜発午前8時→品川到着8時35分で、折返しの出発が9時、横浜到着が9時35分でした。もう一本は午後4時横浜出発、折返しが午後5時出発となっています。
翌日からは六往復に増便、最初のうちは品川〜横浜間の途中に駅はなかったのですが、約一ヶ月後の7月10日から、川崎と神奈川(金川)の両駅が開業、所要時間約40分で運行されました。機関車の運転や運航の管理については、まだノウハウがなく、イギリス人に頼ってのスタートでした。

初代横浜駅 現在の桜木町駅の場所にありました

仮営業とはいっても、座席(列車)も「上等」(運賃片道1円50銭)「中等」(1円)「下等」(50銭)に分かれ、別料金を取ってお客を乗せています。明治初期の1円が現在のどれくらいの価値にあたるか調べると、2万円から3万円という回答が多数です。一番安い「下等」でも品川~横浜片道で1万円(比較するものの値段によっては約5,000円とも)くらいかかった(現在は300円)と考えると、お金持ちの乗物だったわけです。ちなみに4歳以下の幼児は無料、12歳以下は半額という運賃設定でした。

一部運休区間のある「通常営業」と言ったほうがわかりやすいはずですが、ここは10月14日を鉄道記念日とする以上、大人の事情で「仮営業」は譲れないのでしょう。

「上等」「中等」「下等」の各客車

仮営業時に明治天皇がすでにこの路線を利用されています。8月15日、天皇乗船の軍艦が、波浪のため品川に入港できなくなりました。そのため、横浜港で船から降りた後、横浜から品川まで汽車に乗り、そこから皇居に戻るというハプニングが発生したのです。正式開業時に初めて列車に乗ったものと思っていましたが、非公式でも開業2ヶ月前にすでに乗車があったとは驚きです。