中央のホールで幾何学模様の窓や椅子などと並んで存在感を示しているのが、「壁画」です。この別に名のある芸術家による作品というわけではなく、昭和六年(1931)学園の十周年を記念して、在校生と卒業生の有志の手で描かれました。
上の方に描かれている文字はヘブライ語で、「エホバ彼らの前に往きたまい、昼は雲の柱をもて彼らを導き、夜は火の柱をもて彼らを照らして、昼夜往き進ましめ給う」と書かれています。旧約聖書出エジプト紀の一節で、ユダヤの人たちがエジプトを脱出する情景なのでしょう。行く先には「雲の柱」らしき白い柱のようなものが見えます。
「名建築で昼食を」では、この壁画についても二人の会話がやりとりされます。
植「この壁画にはちょっとしたドラマがあるんだ」
その後、この画が生徒たちによって描かれたことや、絵のモチーフに触れた後で
植「でも、長い間漆喰に塗りつぶされていた」
植「発見されたのは1999年、修理の時」
春「ん?どうしてですか?」
植「おそらく、戦争」
二人「・・・」
植「太平洋戦争の時、キリスト教をモチーフにしたのを危惧されたといわれている」
植「だけど、厚く塗られた漆喰の下にあったからこそ、今こうやって修復されて、生徒たちの想いを目撃することができる」(ため息)
植「奇跡だよ」(再度ため息)
春「そうですね・・」
このドラマ、全体としてストーリーらしいストーリーはないのですが、対象とする建築物の見せ方やエピソードの伝え方が素晴らしい、と思うのですが、この第二話は個人的にベストだと思います。
この後の食事シーンのラストのセリフがライト建築の神髄を表しています。
春「本当に、穏やかで優しい気持ちになりますね」
そう、旧山邑邸も、明日館も「癒され感が半端ない建物」なんですね。これは実際に訪れて雰囲気を味わってみないとわからない感覚です。
この後、ドラマは講堂の方に移るのですが、こちらのブログ、次回は二階の食堂をご紹介します。