同じ噺を演ずることを「ネタ(根多)被り」といい、当然ながらタブーです。後の演者は、違う噺でもテーマやマクラが被るのを避けなければいけません。
袖で見ていた草原らは「おい、愛宕山は⁈」と大慌て。ライバルの噺家たちも「寿限無はさっき草々がやったやろ」
父親へのわだかまりが解けた小草若は、泣きながら演じ、号泣しながら下げを言うと舞台を降りてしまいます。それを見つめる父であり師匠の草若・・
が、お客さんは呆然・・・シークレット(お楽しみ)ゲストとして歌を披露するつもりだった「寝床」の大将も
「こんな空気で出れるか」と尻込みしてしまいます。見かねた四草が
「(草々)兄さん、出てください」 草原も
「そや、草々、愛宕山や」「えぇ⁈」
出囃子が鳴り、意を決して舞台に向かおうとする草々と、心配げな喜代美・・思いつめたような表情の草若・・
放送事故ギリギリの15秒の無音時間でその場に居合わせた人たちの表情を追い、その後の名シーンにつなげていく演出の妙が発揮されます。
このあたりは是非NHKオンデマンドかU-NEXTなどで実際にご視聴下さい。(○○tubeにも編集したのがアップされているようですが…)
この後も草々の破門騒動や究極の「壁ドン」からの結婚などなど、一週間ごとに話を完結させながら、途中に伏線を張りつつ、さらに先の話へつないでいく構成は見事です。
最終的にこの弟子たちは、師匠の悲願であった「大阪に落語の定席小屋を作る」のですが、「ちりとてちん」の紹介はここまで。(是非実際にご覧いただきたい傑作です)
次回から「上方落語~定席小屋への道のり」をご紹介していきたいと思います。