おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

吉良星の如く3

 

15世紀の終わりごろ、当時の吉良氏当主の伯母に当たる「弘徳院」のため、同じ名前の庵を作りました。秀吉の小田原城攻めの際、吉良氏は戦わず世田谷城を放棄、城から1キロ足らず南の地に隠棲します。世田谷城は廃城となりました。

徳川の時代となり、吉良氏は「蒔田氏」と改称し、徳川家に仕えることはできたものの、後ろ盾を失った弘徳院は寂れ、荒寺となっていました。

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雨の豪徳寺 門の手前

当時の和尚が、「たま」と名付けた白猫を飼っていました。貧しい中で自分の食事を分け与えるほどの可愛がりようです。あるとき、和尚が愛猫に向かい、「汝我が愛育の恩を知らば何か果報を招来せよ」(なぁ、こんなに可愛がっているんだから、なんか恩返しで良いことをもたらしてくれないか)と語りかけます。猫はきょとんとして和尚を見つめ返します。その後何事もなく月日が経ちました。

ある夏の日の昼下がり、門前で何やら騒がしいので、何事かと出てみたところ、武士が数名、馬を乗り捨てて門から入ってきます。鷹狩の途中のようです。

武士の一人が「我等今当寺の前を通行せんとするに門前に猫一匹うずくまり居て我等を見て手をあげ頻りに招くさまのあまりに不審ければ訪ね入るなり暫く休息させよ」(我々がこの寺を通りがかると猫がこちらを見て手招きをするのが気になって尋ねたものだ。しばし休ませてもらいたい)というので、和尚は粗末ながらお茶を出してもてなしました。

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雨の豪徳寺 門を入ったところ

和尚の話、続きます。