おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

後悔、鷺に立たず

大井町線九品仏(くほんぶつ)駅前にある浄真寺、二十三区内にありながら、京都の古刹を思わせる風情で、お気に入りのお寺の一つです。印相(両手指の形)の異なる九体の阿弥陀如来像が祀られていることから、浄真寺の通称「九品仏」が駅名となったものです。

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九品仏駅からすぐのところに参道があります

浄真寺は、世田谷城の出城であった奥沢城が小田原征伐後廃城となった地に、17世紀後半に当地の名主が寺地としてもらい受け、珂碩上人を開祖とする浄土宗の寺院です。お寺の紹介は次回以降でじっくりするとして、「奥沢城」は16世紀中ごろに吉良頼康によって築かれ、家臣の大平出羽守が守っていました。

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浄真寺本堂前の鷺と鷺草の像(本物の鷺草はこんなに大きくありません)

大平出羽守には、常盤という美しい娘がいました。常盤は吉良頼康の側室(十番目とも十三番目ともいわれます)に迎えられ、その寵愛を一身に集め、頼康の子を懐妊します。側室を多く持ちながらそれまで子供のいなかった頼康や家臣たちは大いに喜びます。

しかし、逆に側室からの妬みをも受けることにもなりました。側室達は「常盤は不義を犯しております、お腹の子は殿のお子ではありません」、などとありもしない讒言を吹き込みます。最初は笑い飛ばしていた頼康ですが、繰り返される告げ口に、常盤への疑念を深め、次第に遠ざけるようになりました。

この話、次回以降に続きます。