おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

ラジオ・リスナーの嘆き3

二十八日午後十一時には、反乱部隊に対して武力鎮圧の命令が下されます。一方の反乱部隊側も、二十八日夜から二十九日にかけて包囲・鎮圧軍を迎え撃つ情勢となりました。二十九日午前五時十分には討伐命令が発せられ、戒厳司令部は近隣住民を避難させます。八時三十分の攻撃開始命令が下されると、飛行機から投降を呼びかけるビラを散布します。

愛宕山の放送局を憲兵隊で固めて反乱部隊の襲撃に備え、八時五十五分から、「兵に告ぐ」と題したラジオ放送が行われます。この放送は九段の軍人会館に設けられた戒厳司令部内の臨時放送室から、放送協会の中村茂アナウンサーにより読みあげられました。

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左上は「兵に告ぐ」の放送用メモ(原稿):放送博物館

この放送によって馳せられたメッセージをまとめると

・すでに勅令が発せられており、これ以上の抵抗は勅命に反することで、逆賊となる。

・お前たちは上官の命令を信じて、服従してきたが、陛下の命令は原隊に復帰せよ、ということである。

・今からでも遅くはないから直ちに抵抗を止めて軍旗の下に復帰するように。そうすれば今までの罪も許される。

・お前たちの父兄はもちろん、国民も心から速やかに現在の位置を捨てて帰ってこい。

というもので、反乱軍兵士たちの耳に届くように、ラジオ放送を拡声する装置を随所に備え付けました。

「兵に告ぐ」の放送とビラの散布は、反乱軍の下士官、兵士たちへ大きな効果を上げ、彼らは目立った抵抗をすることなく順次撤退し、事件発生四日後にして解決する結果となりました。

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二・二六事件首謀者の一人、磯部一等主計(大尉相当)墓:小塚原回向院

二・二六事件とラジオの話はこれで終わりですが、ラジオの話は続きます。