おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

頑張り松する

さて、東京の「松」というとこの松を外すことはできないのが、東小岩にある善養寺の「影向の松」(ようごうのまつ)です。平成二十三年(2011)国指定天然記念物に指定されました。松(リュウキュウマツやゴヨウマツも含むに)で指定されているのは全国でも8件しかありません。

東小岩の善養寺 ご紹介する松は門の先に

東京都の国指定天然記念物は13件ありますが、23区内で、かつ「群生地」や「並木」でなく個体としての樹木に対する指定は3件だけ。列記すると

・元麻布一丁目 善福寺境内の銀杏

練馬区練馬 白山神社境内の欅

江戸川区東小岩 善養寺境内の松

です。このブログでも2021年の8月下旬から9月上旬にかけ、「善え樹を養う~横綱の松」でご紹介しています。今から4年前、たまたまこの辺りを通りがかり、何の知識もない状態でこの松を見た時には、「なぜこんなすごい松が世の中に知られていないのか」と東京都のアピールの下手さを嘆いたものです。

文字上のデータでは、樹齢600年余り、樹高約8m幹の太さ約4.5mに対して枝は横に長く伸び、その長さは東西方向約28m、南北方向約31m、繁茂面積は800㎡以上に及びます。

横に大きく伸びた枝の広さに圧倒されます

18世紀中期に書かれた『星住山星精舎利記』には、善養寺の境内にはもう一本七尋五丈の老松」があると紹介されていて、高い松をを「鶴」、横に広がった方を「亀」として縁起の良い松とされていたようです。

拡がった枝を82本の支柱で支えています

「影向」とは、神仏がこの世に仮の姿をとって現れることを意味するのですが、命名の時期、命名者などは不明です。元々は春日大社の参道脇にあったといわれる松にこの名があったといわれますが、春日大社の松を見て東国に下向した誰かが、その樹形を見て同様に名付けたのでしょうか。

別に「横綱の松」の名がありますが、こちらについては「善え樹を養う~横綱の松」での記事をご参照ください。二十数年前、ライバルであった「岡野の松」のようにこの松も一時的に枯れそうになったことがありましたが、原因の調査とその対策によって見事に元気を取り戻しました。これからも元気な姿を見せ続けて欲しいものです。

一方で、木下川薬師の「登美の松」のように、枯れて現在に残っていない松も多くあったことでしょう。次回は番外編として、天然記念物であったのに枯れてしまった松の話をご紹介したいと思います。