おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

多産の石

ライトが最初に選んだのは、石川県で算出する「菩提石」でした。通称を「蜂の巣石」ということからも、この石も無数の穴を持った凝灰岩です。が、この石には算出量が少ないという弱点がありました。帝国ホテルのような大規模建築に使用するにはそれなりの量が必要ですが、大正八年(1919)の政府統計←この情報をライトも見たと思われますが、菩提石の年間産出量を1とした場合、大谷石は6000-7000倍。

しかも東京の帝国ホテルに使用するにあたって、輸送距離を考えても大谷石が圧倒的に有利でした。

大谷石で彫られた平和観音

それにしても、上の写真を見てもわかる通り、大谷石は加工しやすいという利点はあるものの、デパートなどで使われる大理石や花崗岩のように「磨くと光る」タイプの石ではありません。ライトがこの石の持つどういう魅力に憑りつかれたのか、帝国ホテル、旧山邑邸、自由学園明日館と、この時期以降に日本で作られたライトの建築物にはすべて大谷石がふんだんに使われます。

旧山邑邸(ヨドコウ迎賓館)エントランス

この風合いにライトは「日本らしさ」を見出したのでしょうか。以前NHKの「美の壺」で大谷石を採り上げた際、石工さんの「光を当てることによって大谷石独特の表情が生み出される」という言葉が印象的でした。

また建築家の隈研吾さんは「ライトは多孔質な穴に惹かれていて更に石にいろんな刻みを付ける。そうすることによって多孔質性を更に引き出そうとした。装飾によって大谷石の持っている柔らかさとか土っぽさがより際立つ」ともおっしゃられていました。

自由学園明日館内 暖炉=大谷石

自由学園の建物では外側は基壇等に使われているものの、壁面に比べて占める面積が少なく、あまり目立たないので、室内で印象的だった暖炉の写真をご紹介しました。ライトにとって、暖炉とは暖を取るための手段のみならず、火のあるところに人は集まり、団らんし、安らぎの場を共有するのだと考えており、旧山邑邸にも素敵な暖炉が作られているのですが、その紹介は次回で。