おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

奇跡の軌跡2

さて、繁昌亭の客席へ入ってみましょう。新宿末広亭などですと、入場後は一切撮影が禁止ですが、繁昌亭は開演前や中入り、終演後の場内撮影はOK。

座席は1,2階に分かれていて216席。立見を含めると250名のお客さんを収容できます。末広亭の座席数が313(左右の桟敷席を含む)、浅草演芸ホールの340などと比べると少ないですが、建物が新しいせいか、座席がゆったりと造られているような気がします。(個人の感想です)

舞台正面、開演前ですから緞帳が降りています。大阪天満宮の祭礼である「浪速天神祭」を描いたもので、大阪生まれの女性画家、生田花朝(いくた かちょう 「花朝女」で かちょうじょ とも)の作品が原画になっています。

 緞帳の原画は天神祭

緞帳が上がるとそこに高座があり、正面の額に「楽」の文字が。三代目桂米朝師匠による書です。上方落語四天王の中で唯一会長に就いておられませんが、昭和六十三年(1983)の会長選で選出されたことがあるのです。が、そのころすでに「相談役」となっていて、「いわば隠居の身だから」と辞退したいきさつがあります。平成八年(1996

)には落語界で二人目、上方落語初の「人間国宝」に認定されました。

口上は撮影+拡散OKとのことで撮影 正面の「楽」が米朝師匠の書

つまり、この書は人間国宝の手になるものなのですが、拡大してみると署名や落款がありません。

「楽」の一文字だけが書かれています

文字を書いてもらうときに署名をお願いしたところ、米朝師匠から、「劇場の上に掲げるなら、落語を聴きに来たお客さんの目に入って、何や? と気になるやろうから、裏に(署名を)書いとく」とのことで、表にはこの文字だけが書かれたそうです。

明治時代大阪にあった「桂派」の寄席「幾代亭」にあった額「薬」、「笑いは気の薬」に由来するそうですが、「くさかんむり」を外したのは「草」には「草競馬」「草野球」等の「本格的でない」という意味を持つことからこれを外して「本格的な寄席を目指せ」という意味を込めたといわれています。

加えて「落語」「楽語」の洒落も含むように思うのは私一人ではないと思います。

繁昌亭のご紹介、続きます。