おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

ハマの大将軍3

文化二年(1805)9月に行われた鴨猟での家斉の「猟果?」は次のようなものでした。

真鴨11羽 小鴨2羽 尾長鴨3羽 大鷺1羽 小鷺1羽

鴨(どの種類にあたるのかは? 北の丸公園

将軍自らの獲物のことを「御拳(おこぶし)」といいます。鷹は拳(もちろん厚い皮の防具をはめています)にとまり、そこから放たれるからですね。

将軍一人が鷹を放つのではなく、家来たちも鷹を放つ者、矢で射る者もいました。家来(従者)が鷹を放って捕えたものを「脇」(まぁ将軍が主役ですからね)、矢で仕留めたものを「射留」と呼んでいました。(そのままですね)

この時の「脇」と「射留」は

脇 :岡村備後守 真鴨1羽、中野播磨守 真鴨2羽、尾長鴨2羽

射留 :真鴨1羽 御小姓組、水野石見守組、鈴木鉄蔵、雑鴨1羽 御書院番、津田山城守組、落合式部

これは「大鷺」かな?(水元公園

となっています。「御拳」の圧倒的勝利で、得意満面の家斉の顔が目に浮かぶようです。(こんなときに家来が主役以上に活躍してもマズいですが)

浜御殿で行われたのは鴨猟だけではありません。天保五年(1834)の「御庭拝見」では釣りを楽しんでいた様子を川路聖謨(かわじ としあきら)が記録しています。すでにご紹介の通り、園内の池泉はすべて海水を引き込んでいるので、御殿にいながら海釣りが楽しめるわけですね。

お渡り橋から「中の茶屋」を臨む

寺社奉行の脇坂安董(わきさか やすさだ)らが釣りをしていると、将軍家斉がやってきました。脇坂は弁舌さわやかで男っぷりもよく、家斉お気に入りの家臣だったようです。(外様出身の「願い譜代」ながら老中にまでなっています)「サヨリはくちばしが尖っていて釣りにくいから、大物を狙え」と将軍自らが釣りのコツを伝授していたといいます。そして釣果披露の際には自分の事のように喜んだとか。

気前の良い将軍は「気に入った苗木は抜き取って持って帰ってもいい」と許可を出し、御馳走で歓待だけでなく持ち帰り用のお土産まで・・。近習の家臣たちからは絶大な人気の将軍でした。

余談ですが、2024年1月2,3日には浜離宮恩賜庭園で新年のイベント「浜離宮で華やかなお正月」が開催され、3日には「放鷹術(ほうようじゅつ)」が実演披露されるとのことです。公園内には「富士見山」もありますので、一富士二鷹までここで楽しむことができますね。(あとは茄子でコンプリート!)

庭と家斉の話はここまで。次回も家斉についてご紹介します。