おっさんの街歩き(忠敬に憧れて)

首都圏周辺の見て歩きや気になった本やドラマなどについて語ります

さまよえる葵 だんだん

「大御所時代」をwikipediaで調べると、その期間は寛政五年(1793)から天保十二年(1841)とあります。松平定信の失脚で始まり、家斉の死でピリオドを打ちました。 家斉の死の2年前から老中首座となっていた水野忠邦(みずの ただくに)は、大御所時代の放…

不修身斉家痴国弊天下

大塩の乱の起きた天保八年(1837)4月に徳川家斉は将軍の座を実子家慶に譲りますが、その後も「大御所」として、その死までの約4年間実権を握り続けました。歴史上「大御所時代」とは、この4年ではなく将軍在位51年と併せた期間を指します。 文化・文政期を…

葵に塩 番外編 平野へGO

前々回「葵に塩3」で、美吉屋の奉公人が平野郷に戻った際に漏らした言葉が大塩の潜伏先判明のきっかけになった、という話をご紹介しました。本日その平野の街歩きをしたので、この機会に平野郷の歴史について少しご紹介します。(大塩の流れで訪れたのではな…

葵に塩4

3月末に大塩親子は焼死したものの、この事件関係者への処分が終わったわけではありません。最終的に1000人以上が取り調べられ、そのうちの800人ほどが処分を受けていますが、それが決定したのは乱から1年半を経た天保9年(1838)8月のことでした。 大塩親子…

葵に塩3

潜伏先が漏れたのは、美吉屋五郎兵衛のところに奉公に来ていた娘が、親の病気で暇をもらい、実家の平野郷に戻ったことでした。平野郷は現在の大阪市の東南部、平野区のあたりですが、この地は当時の大阪城代、土井利位(どい としつら)の領地でした。 利位…

葵に塩2

大塩が潜伏していた美吉屋五郎兵衛は、塩田五郎兵衛といい、大塩の妾「ゆう」の姉の「つね」が五郎兵衛の妻でした。また、大塩家四代の佐兵衛の妻の実家が塩田家ということで、遠縁にあたります。染物屋として大塩家に出入りし、乱の際の「救民」の幟や旗な…

葵に塩

反乱に伴う戦闘の意味では半日で鎮圧されたといえますが、首謀者の大塩親子は40日あまりを大阪近郊で潜伏しており、大坂の東西奉行どころか江戸幕府全体がその存在に振り回されます。 逃げおおせると考えたのか、再び決起を考えたのか、というとそういうこと…

大坂の中心で 痛ぁい!を叫ぶ6

放たれた銃弾は大砲方(砲手)の腰に当たります。東町奉行跡部良弼は、味方を鼓舞しまた周囲に奉行方の勝利を知らしめるため、従者に命じ、敵の大砲方の首をとり、槍の穂先に貫いて先に進ませました。(下の写真は赤穂浪士の行列のときのものですが、この時…

大坂の中心で 痛ぁい!を叫ぶ5

東町奉行跡部良弼は馬上の人となり、馬印となる纏(まとい)と案内役の家臣の後に奉行所側の軍勢が続きます。奉行所を出て西に進みます。大塩勢はというと、平野橋を渡ったあたりに集まっていました。下の地図でいうと「平野町通」を東(右方向)に進み、川…

大坂の中心で 痛ぁい!を叫ぶ4

坂本鉉之助の記録で、彼ら奉行側の動きを時間順に追ってみましょう。辰半時といいますから、大塩決起から約一時間経った頃、月番だった坂本のところに、天満で火の手が上がっている、との報が入ります。その火が大塩の決起によるものだと知らされます。未明…

大坂の中心で 痛ぁい!を叫ぶ3

大坂天満の真中で さかさ馬からおっこちた あんなよわい武士見たことない 役高三千ただすてた 大塩の乱のあと、大阪の庶民の間で上のような「ざれ唄」が流行りました。(「役高三千」のところを「鼻紙三帖」とするものもあります) 乱の鎮圧に乗り出そうとし…

大坂の中心で 痛ぁい!を叫ぶ2

決起の情報が漏れてしまったことを大塩がどのように知ったか、をここで明らかにしていかないといけません。 大阪西奉行の堀伊賀守は、参加者に名を連ねていた門人2名が「泊り番」として奉行所内にいることを知り、両名を捕縛しようとします。それに気づいた…

大坂の中心で 痛ぁい!を叫ぶ

「造幣局の通り抜け」として春に桜の名所となっている造幣局、このあたりが天満一丁目にあたります。その正門前の道路を西に100mほど西に進むと「大塩の乱槐の碑」があります。当時ここは東組与力、朝岡助之丞の役宅庭跡でした。その庭には槐(えんじゅ)の…

礼賛と塩対応4

版木を32分割した、というだけではどういうことかわかり辛いので、最初の数行分ですが原文と版木に彫られた部分を比較してみます。 大阪守口市にある大塩門弟の書院跡(豪農の中にも大塩の弟子がいました) 「四海こんき」【ういたし候ハゝ】《天祿ながく》…

礼賛と塩対応3

飢饉により大坂でも米不足が発生しました。天保7年(1836)秋ごろから大坂東町奉行の跡部良弼は大坂の米を江戸に廻送することを命じます。この廻米は新将軍宣下の儀式費用を捻出するための施策でした。その米を集めるため、跡部は京都から大坂まで米を買い求…

礼賛と塩対応2

「大塩平八郎の乱」については、現在関西方面の街歩きで旧跡を巡っているところで、改めて詳しくご紹介する機会を設けようと思います。ここでは家斉~家慶の時代背景を交えながら、ざっとご紹介していきましょう。 この反乱は幕府直轄地、「天下の台所」であ…

礼賛と塩対応

この度の震災の被害に遭われました皆様に心よりお見舞い申し上げ、一日も早い復興を祈念いたします。 さて、ドラマ大奥では触れられませんでしたが、原作コミックには家斉は臨終の前に次のようにつぶやいています。(一部抜粋) わしは女職に溺れ 幕府の財を…

ハマの大将軍3

文化二年(1805)9月に行われた鴨猟での家斉の「猟果?」は次のようなものでした。 真鴨11羽 小鴨2羽 尾長鴨3羽 大鷺1羽 小鷺1羽 鴨(どの種類にあたるのかは? 北の丸公園) 将軍自らの獲物のことを「御拳(おこぶし)」といいます。鷹は拳(もちろん厚い皮…

ハマの大将軍2

「鷹狩り」というと、広大な原野と、獲物を追い立てる犬や家来たちをイメージします。しかし、浜御殿で行われていた鴨猟は戦国時代に織田信長や徳川家康が行っていた「鷹狩り」とちょっとやり方は違うようです。 戦国時代や吉宗までの「鷹狩り」の獲物は鶴や…

ハマの大将軍

東京汐留にある浜離宮恩賜庭園、広さ25万㎡と都立公園としては最大の規模を誇ります。この庭園については過去徳川綱吉や吉宗のところで取り上げてきました。 しかし歴代将軍の中で最もこの庭園を愛用し、整備したのは家斉の代といえるでしょう。また、ほぼ今…

大師の前の弔事2

30歳半ばの急逝、将軍参詣のプレッシャーや心労が原因だったのでしょうか。夜を徹しての準備が行われていたといいますから過労死に近いものだったのでしょう。お寺としては「貫主が亡くなったので御成りは中止に」などと言えるはずもなく、上人の死を隠した…

大師の前の弔事

毎年初詣で多くの参詣者を集めるお寺に、川崎大師があります。初詣の参詣数でいうと明治神宮、成田山新勝寺とここ川崎大師が常に1-3位となっているようです。(ちなみに4位が浅草寺、5位が伏見稲荷大社) 毎年 初詣の人出でにぎわう川崎大師 川崎大師は通称…

打算の多産2

幕府に対する人質の意味から、江戸時代の大名の正室・嫡子は皆江戸に住んでいました。大名や正室が住んでいたのが各藩の江戸上屋敷です。加賀前田家の上屋敷は江戸城の約3km北の本郷(文京区)にありました。 前田家が当初財政負担からこの縁談を断ろうと…

打算の多産

53人の子女をもうけた家斉は好色でもありましたが、吉宗-家重-家定という血脈が途絶えてしまい、自身が将軍となったことを踏まえて、自身が健康であること、そして子孫を多く残すことを大目標に掲げていた様子が見られます。 白牛の乳から白牛酪(はくぎゅ…

ガキの他界やあらへんで5

ドラマ「大奥」で、仲間由紀恵さん演じる一橋治済が家斉に毒を盛ろうとします。狂っていたはずの御台(後の広大院:連佛美沙子さん)と大奥総取締役となっていた元側室お志賀の方(・滝沢:佐津川愛美さん)との共謀で、治済の企みは自分に跳ね返るのですが…

ガキの他界やあらへんで4

乳を与えるのにも直接眼にしたり直接抱くことさえできないわけですから、乳児と添い寝などはもってのほか。お目見以下の御乳持のことを大奥の身分の高い女中たちは見下していたようです。しかも育児の経験のある御乳持に対し、大奥勤めの女中は子供を産み育…

ガキの他界やあらへんで3

この項の話題は文春新書「遊王 徳川家斉」(岡崎 守恭先生著)に基づき、かいつまんでご紹介しているので、より詳しく知りたい方は本書をお勧めします。さて、前回乳母のことを御乳持(おちもち)と紹介しました。これは乳を与えるだけの仕事で、子育てをす…

ガキの他界やあらへんで2

前回、成年までの「生残り確率」を示しましたが、成年はおろか、約半分の子女は3歳以下で亡くなっています。当時は数え年年齢ですから満年齢でいうと2歳以下。 ライトノベル「薬屋のひとりごと」でも冒頭部分で帝の御子が次々と亡くなる事件が起こります。主…

ガキの他界やあらへんで

幕臣川村修富(かわむら ながとみ)の日記に、「大奥の女中に懐妊した人があり、例のように処理せよとの平岡美濃守殿のお達しがあり、自分の順番で取り扱った」という内容のことが記されています。 この平岡美濃守については、前回定信の危機一髪を機転で回…

解任と懐妊

寛政五年(1793)、定信は将軍家斉と父一橋治済の意向に真っ向から反対、退けました。30歳半ばの老中が20歳そこそこの将軍を諫めたやりとりを「続徳川実記」は次の逸話を伝えています 怒った家斉が傍にいた小姓から刀を受け取り、定信に斬りかかろうとするそ…